軍事情報分析会社のIHSジェーンズ(英国)は22日、北朝鮮が弾道ミサイル潜水艦を隠せる新たなドックを建設している、とする衛星写真を公開した。

ドックが建設されている東部の新浦(シンポ)は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に使われている「新浦級」(2000トン)潜水艦の母港だが、ドックのサイズは同級よりも大型の潜水艦を収容できる大きさだという。

日本企業の影

このことから、北朝鮮がより大型の弾道ミサイル潜水艦を開発している可能性が、いよいよ高まってきた。

韓国ではかねてから、北朝鮮がSLBMを3発搭載できる3000トン規模の新型ミサイル潜水艦を開発中であるとの見方が出ていた。

といっても、米国の偵察衛星などが建造の様子を捉えたわけではない。新浦級が事実上、実験用に特化されたものであるために当然、「新型が開発されているであろう」との観測・分析として語られていたのである。

弾道ミサイル潜水艦は本来、水深50メートルよりも深い位置からSLBMを発射できてこそ、行動の隠密性が保たれる。しかし現行の新浦級は、せいぜい水深15メートル前後からしか打ち上げられない。ミサイルを深いところから空中に打ち上げるには、より強い推進力が必要になるが、船体の小さな新浦級では、発射の際に生じる反動を受け止めきれないのだ。

さらに、新浦級はSLBMを1発しか搭載できず、それでは戦力として貧弱すぎる。こう考えれば必然的に、北朝鮮はより大型の潜水艦を開発しているであろう、との分析が出てくるわけだ。

そして今回、大型の潜水艦用ドックの建設が捕捉されたことは、このような分析を裏付ける一種のハード・エビデンスと言えるだろう。

北朝鮮の新型潜水艦がいつ、その姿を現すのかが気になるが、いずれにしも、そのことは日本の安全保障にとって大きな意味を持つ。核ミサイルを搭載した北朝鮮の潜水艦は、日本海を活動エリアにすることになるからだ。

北朝鮮の潜水艦が、性能面で日本の脅威になる日はしばらく来ないだろう。海上自衛隊にとって、捕捉・撃沈は難しいことではないかも知れない。だからこそ、海自が北朝鮮の核ミサイル潜水艦を撃沈すべき状況が生じうることを、今から認識しておく必要がある。

しかしそれにしても、北朝鮮の弾道ミサイル潜水艦開発の取り組みが20数年前に日本企業の仲介で始まった時には、世論の関心はさして高くなかった。そしていつの間にか、状況はここまで悪化してしまった。

北朝鮮の核・ミサイル開発によって、日本の将来にどのようなリスクが生じうるか、日本政府はすっかり低調になりつつある対北情報戦への投資を増やし、活発に意見交換する空気を作るべきではないのか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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