韓国で7月27日に封切り予定の映画「仁川上陸作戦」。マッカーサー役にニーアム・リーソンがキャスティングされるなど、話題を集めているが、北朝鮮でも噂が広がっている。

1950年6月25日、北朝鮮軍の韓国侵攻で始まった朝鮮戦争。北朝鮮軍は快進撃を続け、慶尚道の一部を除く朝鮮半島のほとんどを手中に収めた。その状況を打開するため、米軍が主体となる国連軍は同年9月15日、ソウルの西40キロにある仁川の月尾島に4万人の兵力を上陸させた。

作戦は大成功し、国連軍は2週間後にソウル奪還に成功、戦況を大きく転換させた。補給路を絶たれた北朝鮮軍は、全面的な後退を余儀なくされた。

当局通達が好奇心を煽る

この仁川上陸作戦を描いた映画に、北朝鮮からラブコールが寄せられている。

北朝鮮事情に精通したデイリーNKの情報筋によると、北朝鮮国内ではすでにこの映画についての噂が広まっている。そのきっかけとなったのは、北朝鮮当局の通達だ。

当局は、人民班(町内会)の会議で「南朝鮮(韓国)で、反共和国(北朝鮮)謀略映画が制作された」と住民に伝えた。会議の詳しい中身は明らかになっていないが、「その映画を見た者は、厳罰に処す」といったものだったと思われる。

好奇心を煽らないように、内容を伝えないのが北朝鮮当局のいつももやり方だが、それがかえって好奇心を煽る結果となったのも、いつもどおりの反応だ。

北侵説に「不自然だ」

その背景には「真実を知りたい」という知識欲がある。

北朝鮮で「祖国解放戦争」と呼ばれる朝鮮戦争。国連軍が北朝鮮に侵攻したが、それを防いで逆に南を攻め落とす直前まで行ったという「北侵説」が正史化されているが、韓流ドラマ、映画が北朝鮮に定着する以前から、「不自然だ」と疑問を持つ人が大勢存在した。

北朝鮮は1983年、仁川上陸作戦を描いた映画「月尾島」を制作した。人民軍(北朝鮮軍)の歩兵中隊が、月尾島を守るべく3日間死闘を繰り広げ、そのおかげで韓国全域に展開していた他の人民軍が無事後退することができたというものだ。

口々に「ありえない」

また、国連軍は144隻もの軍艦を失い、数十万の兵力を殲滅させられたことになっており、神話レベルのストーリーだ。

この映画を見た人々の反応は当然のように「押し寄せる大軍をたった4門の砲で守ったというのは不自然だ」「3日ものんびりしていたわけがない」「仁川で死んだはずの中隊長の墓が(平壌郊外の)南浦にあるのはなぜだ」「実際は生き残ったのではないか」などといったものだった。

実際のところ、9月15日午前6時30分に上陸が始まり、北朝鮮軍400人が反撃したが、島はわずか45分で陥落した。その後、午後5時30分に本土への上陸が始まった。慶尚道での戦闘で兵力を割かれていた北朝鮮軍の抵抗はほとんどなく、翌朝までに仁川市内を完全に制圧した。

北朝鮮軍が本格的な反攻を始めたのは、20日の永登浦(ソウルを流れる漢江の南側)の市街戦からで、空爆を伴う大々的なものだったという。

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