韓国統一省の鄭俊熙(チョン・ジュンヒ)報道官は18日の定例記者会見で、「北朝鮮はいつでも核実験を行える準備状態を維持しているようだ」と述べた。

一方、共同通信は同日、日韓政府筋の話として、北朝鮮が豊渓里(プンゲリ)の核実験場に観測機器を設置するなどの動きを本格化させており、月内にも5回目の核実験を強行する恐れがあると報じた。

絶望とヤケクソ

実際のところ、北朝鮮が新たな核実験を行うのは、既定路線のようなものだ。金正恩党委員長が目指しているのは信頼性の高い核ミサイルの実戦配備を急ぐことであり、それは本人が明言していることでもある。

だから北朝鮮にとってのポイントは、核実験をやるかやらないか、ではなく、いつどのような状況で行うかだろう。

米韓が、最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍への配備を決めて以来、両国と中国・ロシアとの間には葛藤が増してきている。とくに中国は、南シナ海を巡る国際的な仲裁裁判で管轄権についての主張が否定されたことを受け、米国や関係各国へのけん制を強めている。

この状況で核実験を行ったら、国際社会は対北朝鮮制裁でどこまで歩調を合わせられるのか――正恩氏がこれを「見物」と考えたとしても不思議ではあるまい。

一方、北朝鮮は米国が人権問題をめぐり正恩氏を制裁対象に指定したことに、激しく反発している。

人権侵害は、金正恩体制の根幹にかかわる問題だ。恐怖政治に依存する正恩氏が、国民の人権問題の抜本的な解決に向かうことなど絶対にあり得ない。またそのことによって、正恩氏は日本や欧米主要国と良好な築き得ないことが宿命づけられてしまっている。核とミサイルの暴走の背景には、そのような現実に対する絶望とヤケクソがあるのだ。

そして、どうやら米国は、遅まきながらその事実に目を向け始めたようだ。


正恩氏の「核の暴走」と人権問題の間には、本質的な相関関係がある。

最初に述べたように、核実験は北朝鮮にとって既定路線であり、おそらく核ミサイルを実戦配備するまで止めようとはしないだろう。だから、今こそ北朝鮮という国の本質について考えるべきだと、筆者は考える。

日本の政治家やメディアは対北政策を巡り、「対話と圧力」という言葉をよく使うが、いつも大事な要素が抜け落ちている。「誰」と対話し、「誰」に圧力をかけるのか、ということだ。

圧力をかけるべき相手は当然、正恩氏だろうが、対話すべき相手は正恩氏だけではない。人権侵害に苦しむ北朝鮮国民に目を向け、彼らと対話し、どのような未来を望んでいるかを知ることもまた、北東アジアの将来を考える上で重要なのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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