北朝鮮で、毎年7月8日は、故金日成氏の命日。北朝鮮当局は、この日を「民族最大の追悼の日」と定め、革命史跡館の見学、革命思想研究室での学習、政治講演会、音楽会、銅像への献花、映画鑑賞など様々な行事を開く。

追悼期間中の歌舞音曲、飲酒は禁じられ、市場や食堂は営業停止となる。行事に参加しなかったことが発覚すると、労働党からの除籍、更迭を含む、重い処分が下される。

しかし、22回目の命日を迎えた今年の7月8日は例年と様子が違ったとデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。

黄海北道(ファンヘブクト)の内部情報筋は「今年は、追悼行事に参加しない人がかなり多く、参加しなくても罰せられることはなかった」と語る。

情報筋によると、道、市、郡の労働党は、工場、企業所で金日成氏追悼行事の監督を行ったが、形式上に過ぎなかったという。

8日の朝には、団体、個人単位で献花する行事が開かれたが、それ以外には特に行事は開かれず。夜には、まるでめでたいことでもあったかのように、酒を飲んで大騒ぎする人もいた。金正日時代なら到底考えられないことだ。

さらに、金日成氏の命日そのものに対する人々の関心も薄れつつある。

当局からは「追悼行事に一人残らず参加せよ」との指示が下されたが、「市場で商売しなければ死んでしまう」という理由で、幹部にワイロをつかませたり、コネを使うなどの手段を使って、行事に参加しない人がますます増えている。

こうした風潮について、金正恩党委員長が、体制の安定に自信を持ち、金日成氏、金正日氏のくびきから逃れようとしているのではないかという見方もある。

ただし、北朝鮮当局が「金日成氏追悼行事の欠席」を公式に認めたわけではない。遺訓政治が基本中の基本である北朝鮮では、金日成氏、金正日氏の「業績」を公式に否定、批判することは絶対にありえない。

また「参加しなくていい」などと公式に宣言すると、「金正恩氏は、親を大切にしない」との認識が広がり、かえって体制の不安定化を招きかねない。

今年からの変化の背景には、取り締まりを行わず、行事を減らしながら、徐々に金日成・正日氏の影響下から抜け出す狙いがあると見られる。今年12月17日の金正日氏の命日にも、同様の現象が見られるかに注目が集まる。

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