米財務省は6日、北朝鮮での人権侵害に責任があるとして、金正恩党委員長を含む北朝鮮の幹部ら15人と国家安全保衛部など住民監視機関8団体を制裁対象に指定した。

今回のアメリカの措置は、正恩氏が北朝鮮国民の基本的人権を蹂躙する「断罪すべき罪人」であると世界にアナウンスするものであり、事実上、正恩氏に対する「死刑宣告」とも言えるものだ。

彼が父・金正日総書記の後継者として登場した当初、北朝鮮の人権侵害は父や祖父・金日成主席との時代に行われてきたものであって、正恩氏は「負の遺産」を背負わされたのだとする見方も一部にはあった。

しかしこの間、正恩氏は粛清や処刑を繰り返す恐怖政治を敷き、朝鮮労働党大会と最高人民会議を経て自らの独裁権力の基盤を固めた。つまり、北朝鮮の全国民の生殺与奪を一手に握ったわけで、かの国で行われるいかなる人権侵害も、すべて彼の責任に帰結する構図となったわけだ。

国民の人権をないがしろにすることで成り立ってきた体制の独裁者は、世界の人権問題の潮流を知らず、墓穴を掘ったのである。

では、アメリカの思惑はどうか。

アメリカは従来、北朝鮮外交において、人権問題よりは核・ミサイル開発を阻止することに力を注いできた。その理由はアメリカの安全保障のためでもあるが、人権問題を強調すれば、北朝鮮との対話と交渉が途絶えることが火を見るよりも明らかだからだ。

それでも米国が敢えて、「人権制裁」に踏み込んだ理由は何か。それは金正恩氏が独裁権力を握り、北朝鮮に民主主義の存在しないことが、核とミサイルの暴走と密接につながっていると考えたからだろう。

米国は金輪際、北朝鮮と「妥協も取引も」しないことを宣言したわけだ。また、北朝鮮の人権蹂躙を誰が行っているのかを全世界に知らせ、いつかこのリストに載せられた人々が処罰を受けるであろうことを警告したのである。

これから展開される米国の対北朝鮮人権制裁の強度がどれほどのものになるかは、これまでベールに包まれてきた北朝鮮の権力機関が複数、制裁対象に含まれたことからも見当がつく。

アメリカは既に制裁指定されていた偵察総局に加え、朝鮮労働党の組織指導部、国家安全保衛部などを新たに制裁対象に含めた。これらの機関は正恩氏の独裁を幇助する核心機関であるため、北朝鮮はいっそう猛烈に反発するだろうが、アメリカはそれも意に介さないというわけだ。

ただ、米国の今回の措置は、新たな方向性の「第一歩」であるべきだ。これで終わりでなく、「第二歩」「第三歩」が続くべきだという意味だ。そして正恩氏に人権侵害の責任を問うためには、究極的には彼を国際刑事裁判所(ICC)の被告人席に座らせなければならない。

そこまで行くのは、米国や韓国だけの努力では不可能である。

しかし考えてみてほしい。事態がそこまで進めば、その時こそ、日本人拉致問題が解決が可能になるのではないだろうか。

北朝鮮の人権や民主化の実現には、膨大な労力と時間を伴うかもしれない。しかし、そうしたコストを投じずして、拉致問題の解決が可能だろうか?

行く道は遠いが、まず「第一歩」としてなすべきことは明らかだと思える。日本が米国に続いて同様の制裁を発動すれば、国際世論に与えるインパクトは小さくないはずであり、拉致問題解決の糸口も見つかるだろう。

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