北朝鮮で、5月に行われた朝鮮労働党第7回大会直前から、電力事情が改善しているようだ。平壌や元山(ウォンサン)ではほぼ丸一日、咸興(ハムン)、清津(チョンジン)などの地方の大都市、中小都市でも、1日に5時間以上電気が供給されるようになりつつあるという。

改善に伴い、鉄道運行も正常化へ向かっている。その一方で、鉄道運賃が突如10倍に値上げされ、庶民の家計を直撃していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

元山の情報筋によると、運賃の値上げが行われたのは7月1日。咸興から恵山(ヘサン)までの公式運賃が、800北朝鮮ウォン(約10.4円)から8000ウォン(約104円)に10倍値上げされた。

コメ1キロがおおよそ5000北朝鮮ウォン(約65円)だとすると、8000ウォンは決して高くはない。むしろ、これまでの価格設定が、非現実的だったと言える。

しかし、値段設定以前に、一般庶民が公式運賃で切符を買うことは事実上不可能。公式価格の切符は、力とコネのある幹部が、ダフ屋とグルになって切符を買い占めているからだ。

もともと、公式運賃の数倍だったヤミ切符の値段もさらに10倍になった。ますます庶民が購入できなくなっている。さらに、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の情報筋によると、鉄道運賃値上げのあおりで、バスやソビ車(トラックバス)の運賃も大幅に上がることが予想されている。

その一方で、バス及びソビ車は、鉄道運賃ほどの上がり幅にはならないと見る向きもある。バスの路線網は、電力難で運行されていなかった鉄道を補完する形で、路線網が急速に拡大したという経緯があるからだ。

元山の情報筋は「中国のように実名制を導入してダフ屋対策を取ったのならともかく、何もせずに運賃だけ値上げするのはひどい」と嘆いている。この「実名制」とは次のようなものだ。

かつての中国で、鉄道の切符を買うことは大仕事だった。切符売り場に半日並ばされた挙句、発売当日なのに売り切れていて買えないこともしばしばあった。ダフ屋が横行していた上に、地域の共産党幹部がコネで切符を買い占めていたからだ。

ところが、今では状況が見違えるように改善した。2011年6月に、切符の購入に当たって身分証明書の提示が求められる「実名制」が導入され、ダフ屋や横流しが概ね排除されたからだ。さらに、鉄道の路線数も列車の運行本数も大幅に増え、ネット予約など、購入方法も多様化したことで、かつてのような苦労をしなくても鉄道の切符が買えるようになっている。

一方の北朝鮮だが、中国とは違い、それだけのインフラを整備する意志もなければ経済的な余裕もない。幹部とダフ屋の横行は当面なくなりそうにないようだ。

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