北朝鮮が中距離弾道ミサイル・ムスダンの発射実験で成功したとの見方が強まっている。ムスダンは4月15日、初めて試射された際に空中爆発。完成までの道は遠いと見られていたが、北朝鮮はたった2カ月余りで、大きな成果を上げてしまった。

どうして、そんなことができるのか。最大の理由は、金正恩党委員長が独裁体制を敷いていることにある。

軍隊が弾圧

かつて中曽根康弘元首相は防衛庁長官在任時、日本の核武装の可能性について極秘裏に調べさせた。その結論は、「技術的には可能だが、国土の狭い日本には核実験場がないのでムリ」というものだったという。

それでも核開発を強行するようなら、巨大なデモを呼び起こし、政権はすぐに倒されてしまうだろう。

一方、日本が狭いというなら北朝鮮はもっと狭いが、言論の自由がないので、住民の反対運動など起きようもない。デモなどをすれば、軍隊に虐殺されるか、政治犯収容所で拷問され処刑されてしまう。


弾道ミサイルの場合も同じだ。

「血の粛清」が待っている

専門家によれば、空中爆発などの根本的な欠陥が認められた場合、数カ月から1年を経て再実験を行うのが「常識」だそうだ。

だが、それは費用対効果を考え、国民の血税や投資家のおカネを大事に使わねばならない民主主義国家における「常識」である。正恩氏が恐怖政治で支配する独裁体制においては、彼が「急げ」と言ったら開発部門は何が何でも急がねばならない。従わなければ「血の粛清」が待っている。

つまり、北朝鮮問題の本質は、核・ミサイル開発それ自体よりも独裁体制であること、つまりは民主主義が無いことにあるわけだ。言い方を変えれば、北朝鮮で民主化が達成されない以上、核とミサイルの暴走は止まらないということだ。

もちろん、北朝鮮の民主化を達成するためには、途方もないコストと時間を要するであろうことはわかる。しかし今後、金正恩体制と軍事的に対峙していく上でのコストも、天文学的に膨れ上がっていく可能性がある。

金正恩氏の狙いは、相当数の中距離弾道ミサイルに核弾頭を装着。発射動向の把握が難しい移動式発射台に載せ、地下トンネルなどに隠すなどして、米軍などの攻撃に対する生存性を高める狙いと見られる。

北朝鮮はまた、隠密性の高い弾道ミサイル潜水艦の開発も進めており、これらが実戦配備されることになれば、日本の安保環境は激変する。いくらコストをかけても、「北の核」に狙われているという不安を除去することはできないかもしれない。

だから今こそ、日本国民は、北朝鮮の民主化と自国の安全保障を結び付けて考えて見るべきではないだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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