正恩氏に核とミサイルの開発を放棄させるだけなら、経済支援をカードに交渉すれば、いずれどこかで折り合いがつく。しかし、人権問題はそうはいかない。仮に正恩氏が政治犯収容所の閉鎖を決断しても、虐待の末に膨大な人命を奪った罪は決して消えないからだ。
(参考記事:赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた…北朝鮮「政治犯収容所」の実態)そして日本も、民主国家として、そんな国と率先して国交を結ぶわけにはいかない。国連で北朝鮮の人権侵害を自ら告発してきただけに、なおさらである。
これくらいのことは、バカでない限り誰にでもわかる。もちろん正恩氏もわかっているはずで、彼が期待しない以上、「国交正常化」が日本側の交渉のカードになるはずがないのだ。
だからといって、私は北朝鮮との交渉を止めてしまえと言いたいわけではない。軍事的な解決はムリなのだから、やはり話し合いは必要だ。
(参考記事:自衛隊は絶対に「拉致被害者」を救出できない)それに、生存しているかも知れない拉致被害者の命には限りがある。北朝鮮の体制が変化するのを、気長に待ってなどいられない。