つまり、北朝鮮の核開発意図を「外科的」に阻止するならば今が最大のチャンスであり、ストラトフォーのレポートはそれを強く促しているような部分もあるのだ。仮に米国と北朝鮮が戦争になれば、米国の同盟国である韓国に甚大な被害が生じるのは避けられないが、レポートは北朝鮮の兵器の老朽化などを理由に「反撃によるリスクは限定的」だと指摘しているという。
やるなら今しかない、というわけだ。
正恩氏が米国による「斬首」を確実に避けるためには、やはり核開発を放棄するしかなかろう。しかし仮にそうしても、人権問題で追い詰められている正恩氏が、米国などと良好な関係を築ける可能性はゼロに等しい。
(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑)(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「人道に対する罪」の実態)
正恩氏の置かれた立場こそ、「進も地獄、退くも地獄」なのかもしれない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。