北朝鮮の国民はすでに、国家の配給制度に頼らず、自分たちの商売の稼ぎで日々の糧を得ている。当局の監視の目を縫って、海外情報とのアクセスも広がっている。徐々に、自己主張せずにはいられなくなっているのではないか。
ただ、北朝鮮当局のやり方は変わっていない。クウェートでのストの件も国内で起きていれば、かつてと同じように戦車で踏みつぶしていたのではないか。
(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」)北朝鮮当局は、クウェートで働いていた労働者数十人に対して帰国命令を出し、5月17日の高麗航空の臨時便に乗せて帰国させた。本人たちには帰国命令を出発前日まで知らせず、前日まで通常通り働かせていた。
その後、労働者たちがどうなったかは分からないが、昔なら政治犯収容所に送られたり、公開処刑もあり得たはずだ。
(参考記事:北朝鮮の「公開処刑」はこうして行われる)今後は、体制に抗議の声を上げた北朝鮮の人々がそのような目に遭うことがないよう、国際社会は、何らかの救済手段を構築すべきではないだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。