韓国軍の女性将校が、韓国軍と米軍の最精鋭戦闘員資格を次々と取得し、話題となっている。両国軍を通じ、女性として初の例だという。

将校は、韓国陸軍第30師団・機械化歩兵大隊所属のチョン・ジウン中尉(26歳)。韓国軍によると、チョン中尉は昨年11月、陸軍最精鋭戦闘員2期の資格試験に合格したのに続き、先月末には米韓連合師団がキャンプ・ケーシー(京畿東豆川)で行った優秀歩兵記章(EIB=Expert Infantryman Badge)資格試験に合格した。

軍内「性的虐待」が横行

いずれも強靭な体力と戦闘技術を求められるもので、「地獄のテスト」と呼ばれるEIB資格試験の合格率は15%以下。韓国陸軍の試験は85人が受験し、合格者はチョン中尉を含め4人だった。

米軍は今年に入って初めて、戦闘任務に当たる地上部隊への配属を女性に認めたこともあり、EIB資格試験の合格者はまだ出ていない。

チョン中尉は、テコンドーと柔道の有段者(いずれも3段)で、2012年に韓国の全国女子新人ボクシング選手権大会で3位に入賞した格闘技の「猛者」でもある。

ところで、韓国軍と対峙する北朝鮮軍(朝鮮人民軍)はどうか。

北朝鮮では、高射砲中隊や海岸砲中隊など、女性だけの独立中隊が存在し、その精勤ぶりが官営メディアで持ち上げられることも多い。そうすることで国民に対し「我々は皆、国防を担う兵士である」との意識を植え付けようとするわけだ。

ちなみに、金正恩党委員長の寵愛を受ける北朝鮮版ガールズグループの「モランボン楽団」の美女たちは、軍将校としての階級を持っている。団長で、金正恩氏の元恋人とも言われる玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏の階級は大佐だ。

一般的な実態としては、北朝鮮女性はかなりの割合で、高校を卒業し大学に進学ができない場合に軍に志願入隊する。家計が苦しく「口減らし」のためである例も多いが、いきなり農場に配置され、生涯を田舎で暮らす人生に抵抗するためでもある。軍に入れば、朝鮮労働党に入党する道が開け、就職の選択肢が増えるからだ。

ところが、ここで多くの女性が「ワナ」にかかる。男性の上官から、入党と引き換えに「性上納」を求められるなどの性的虐待が横行しているのだ。北朝鮮で権力を握る男性はやりたい放題だが、それ軍隊にも例外なく及んでいるということだ。


17歳で入隊し、ほとんど休暇もなく軍隊生活を送る中で、上官の要求を拒絶し通すことは簡単ではない。無論、北朝鮮の女性たちがそんな現実を甘受してばかりいるわけではない。脱北者に占める女性の割合が高いのも、そのひとつの表れと言えよう。

こんな状況で朝鮮半島に有事が訪れても、北朝鮮の女性兵士たちが命を賭して国家を守るなどちうことは、とうてい考えられない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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