一方、党大会に先立って行われた大増産キャンペーンの重圧が、脱北増加を促している可能性もある。無謀なスケジュールで進められる北朝鮮の増産キャンペーンは、国民生活と経済の疲弊を招くだけでなく、大惨事につながるリスクと常に隣り合わせだ。そこで繰り広げられた「地獄絵図」について、北朝鮮国民は誰もがウワサぐらいは聞いている。
(参考記事: 橋崩落で500人死亡の「地獄絵図」…人民を死に追いやる「鶴の一声」)草の根資本主義の広がりとともに、北朝鮮国民は経済的にも思考の面でも国家からすっかり自立している。今後、さらに多くの人々が「こんな国、やってらんねえ」と見切りをつけたとしても、何ら不思議ではない。
いずれにしても、脱北者の増加は明らかに正恩氏の失政の表れと言えるだろう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。