まず考えられるのは、核実験・ミサイル発射に対する国連制裁の影響だ。制裁により、海外に赴任している外貨稼ぎの担当者たちが、ノルマ未達で下されるペナルティーに負担を感じ、逃亡の道を選んでいるのだ。
4月に発生した北朝鮮レストラン従業員らの集団脱北が典型的と言えるだろうが、北朝鮮本国もまた、これには警戒を募らせている。彼女らの顔写真や個人情報を公開し、「指名手配」とも言える措置を取っているのだ。
(参考記事:金正恩氏に「指名手配」された脱北美女たちの運命)「地獄絵図」のウワサ
ただ、そのような強硬姿勢で、脱北を思いとどまらせることができるかは疑問だ。金正恩氏は、先月の朝鮮労働党大会で自らの独裁体制を強化すべく、一昨年あたりから無慈悲な粛清を繰り広げてきた。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)党大会が開かれる頃には、正恩氏に対して批判どころか意見すら述べられない空気が支配的になり、彼の目論見はある部分では成功したと言える。しかしその反面、少なくない国民の間で、恐怖から逃れる機会への渇望が強まっているのだろう。