〈大きなヒロポン事件には奇妙なウワサがあとを絶たない。釜山にある日本総領事館では日本警察当局から非常に微妙な依頼を受け、頭を痛めていたことがあった。日本の警察に捕まった日本のヒロポン密輸業者が「韓国のある空港に出ている機関員が、目をつぶってくれるおかげで、厳しい検査を受けずにヒロポンを持ち込めた」と自供したからである。調べてみたところその機関員は実在の人物で、彼がヒロポン密輸出を黙認したのが事実なのか事実でないのかについては、日本の警察当局からの確認催促にもかかわらず総領事館の立場では明らかにするすべがない〉(傍点は筆者)
ここで言われている機関員こそ、KCIAの要員に他ならない。KCIAは単なる情報機関ではなく、国民の思想・動向を監視する秘密警察として絶大な権力を振るってもいた。
KCIAが組織的に覚せい剤密造を庇護、あるいは奨励していたとは思えないが、日本の暴力団との縁故関係からもたらされた利権として、甘い汁を吸う要員が少なくなかったのだろう。
猛烈な異臭
しかし1980年代に入ると、韓国当局の姿勢にも顕著な変化が現れる。