中国の習近平共産党総書記は1日午後、北京の人民大会堂で、中国を訪問中の北朝鮮の外交トップ、李スヨン朝鮮労働党副委員長と、およそ30分間会談した。

習氏は李氏ら北朝鮮代表団の訪中を歓迎。李氏も中朝の伝統的な友好関係を発展させようとする金正恩党委員長のメッセージを伝えたようだが、北朝鮮の核開発続行の意思は固く、この問題では両者間の溝の深さがむしろ明らかになったようだ。

米軍の「斬首部隊」

一方、北朝鮮の朝鮮中央テレビはこの日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など新兵器類の試射場面をまとめた特集映像を公開した。対艦ミサイル、大口径多連装ロケット、地対空ミサイル、スカッドC短距離弾道ミサイル、対戦車ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイルなどの発射場面が次々と流れ、1月の「水爆実験の成功」も強調されている。

習氏との会談日程に合わせたものであるのは明らかだ。

大手新聞などの記事を読むと、金正恩氏は米国や中国に対話を求め、揺さぶりとして核・ミサイル実験を繰り返しているとの分析を見かける。しかし、現実はそうではなかろう。

正恩氏も、いずれは対話に乗り出すかもしれないが、それはしばらく後のことだ。正恩氏は、核弾頭と固体燃料ロケットを装着していつでも発射できる状態になった中距離弾道ミサイル(数十~100発以上)を実戦配備し、なおかつそれを捕捉の難しい移動式発射台に載せた上で地下トンネルに隠し、仮に米国から攻撃されても、その同盟国である韓国と日本に耐えがたい損害を与える能力を備えるまで、対話には積極的にならないだろう。

つまり彼は、1日も早く核兵器を実戦配備し、恫喝としての対外交渉に乗り出そうとしているわけだ。今回の李氏の訪中も、その「地ならし」としての意味が強いのではなかろうか。

正恩氏が核武装の腹を決めており、そのために必要な能力の多くを北朝鮮が備えてしまっている以上、われわれに残された時間は多くはない。今からでも、北朝鮮とどう向き合うべきか、本質的な部分を再検討すべきではないだろうか。

もっとも、米韓はすでに再検討を進めているかもしれないが。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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