北朝鮮がムスダンの実戦配備を急いだのは、米国のブッシュ前大統領による「悪の枢軸」発言が背景にあったように思われる。ブッシュ氏は2002年1月29日の一般教書演説で、北朝鮮とイラン、イラクの3カ国を「悪の枢軸」と総称して名指で批判。翌年3月にはイラク戦争に踏み切った。
こうした動きに、北朝鮮が脅威を感じなかったはずはない。当時の最高指導者だった金正日総書記には、とにかく米軍基地に届く――あるいはせめて、「届きそうに見える」ミサイルが抑止力として必要だったのだろう。だから、ムスダンの「信頼性」は二の次だったのだ。
ならば、正恩氏は今になってなぜ、失敗を繰り返しながらムスダンを撃ち続けているのか。