先月、中国浙江省で発生した「北朝鮮レストラン従業員集団脱北事件」の報復として、北朝鮮は相当規模の「拉致組」を中国に派遣した模様だ。

北朝鮮の内部事情に精通した情報筋はデイリーNKに対し、北朝鮮の金正恩党委員長が、「(脱北し韓国に亡命した)13人の従業員らの数倍の韓国人を拉致せよ」との指示を下したようだ、と語った。

情報筋によると、「拉致組」は北朝鮮の国家安全保衛部(秘密警察)で「不満分子」の内偵などを行う反探要員や、軍の偵察総局の要員から成り、その数は300人以上と史上最大規模だという。

彼らの一番のターゲットは、中国国内で脱北者を対象に布教と支援活動を行っているキリスト教関係者やNGO関係者、北朝鮮当局が「裏切り者」と呼ぶ脱北者などだ。

ホテルでのぞき見

彼らはまず、瀋陽、延吉の空港で張り込み、韓国発の飛行機から降りてきた乗客をチェックし、狙いを定める作業を行っている。

また、延吉駅、延吉西駅、丹東駅、瀋陽空港と丹東を結ぶバスが発着するバスターミナルなどにも張り込み要員がいることが考えられる。

さらに、韓国人客の多いレストランや、ホテルも監視している。中国では、ホテルのチェックインの際にパスポートの提示が義務付けられているため、フロントを覗き見ていれば、国籍などの個人情報を把握するのも難しくはない。

「拉致組」はこのようにして狙いを定めた上で、対象と接触し、調査を進める。

別の情報筋によると、保衛部は「宣教師は(北朝鮮の人間に)カネやモノを渡そうとするので受け取れ」「いつ、どこで会ったかを報告せよ」との指令を出している。

殺人事件も

こうして対象の動向や個人情報を探り、2~3年をかけて完全に把握した上で、拉致を実行する。

自国の領土で、他国の要員がこれ見よがしに活動していることに、現地の公安当局は不快感を抱いている。また、「拉致組」の暗躍により韓国国民の緊張状態が続けば、中国経済にも悪影響を及ぼすことが予想される。

丹東や延吉などの中朝国境地帯は、脱北者支援のみならず、ビジネスなどで長期滞在する韓国人や、白頭山や北朝鮮国境などの観光地を訪れる観光客が非常に多いからだ。韓国政府も危機感を強めている。

韓国の外交省は12日、自国民に対して「拉致やテロの恐れがある」として、丹東や延吉を含む中朝国境地帯への渡航を自粛するように呼びかけた。実際、先月30日には、脱北者の支援活動を行ってきた中国朝鮮族の牧師が何者かに殺害される事件が起きている。

美女の背後にワナが

ある脱北者は、同地域にどうしても渡航、滞在せざるを得ない人に次のようにアドバイスしている。

「まず、北朝鮮レストランの利用は避けるべきだ。美人従業員の背後に、保衛部の要員が潜んでいることを忘れてはならない」

また、「中国朝鮮族が経営するレストランなどの店舗に1人で入ることも避けるように」とも述べた。これは、ごく一部だが保衛部にカネで買収され、情報を売ったり、料理や飲物に睡眠薬や麻酔薬を入れて、拉致に加担する者がいるからだ。

さらに、「北朝鮮から来た貿易関係者、プライベート旅行者、密輸業者などの一時的な出国者との接触も避ける。国内情報の提供と引き換えに、電話番号や住所を聞かれたら、罠だと疑うべきだ」とも語った。

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