北朝鮮ではヤクザのことを「チュモクセゲ」、直訳すると「拳の世界」という。非常にわかりやすいネーミングだ。

前回の主人公、ソク・ギョンチョルのイメージにもピタリとはまる。彼が率いたグループは、愚連隊から出発し、200人規模のヤクザ組織に発展していったケースだった。

その一方、国家機関と「紳士協定」を結び――すなわち癒着しながら利権をシノギにするヤクザ組織も存在していた。

1995年に文藝春秋から発刊された『北朝鮮不良日記』(白栄吉著、李英和訳)には、知られざる北朝鮮ヤクザ事情が紹介されている。白氏は、北朝鮮の南部に位置する平安南道安州市のヤクザ組織「パッキ派(車輪派)」の元幹部。パッキ派の構成員は約200人で安州最大の組織だった。

独特のオーラ

16年ほど前、白栄吉(ペク・ヨンギル)氏と会って北朝鮮のヤクザ事情について話を聞いたことがある。