国連安全保障理事会で北朝鮮の核実験およびミサイル発射に対する制裁決議が採択されてから1ヶ月が経過したことに際し、韓国政府は5日、「『国際社会対北朝鮮』の構図がより鮮明になるなど、制裁の効果が見えてきた」との見解を示した。

たしかに、今回の制裁はかつてと比べ多面的な効果を見せているようで、北朝鮮が友好国の観光収入の「おすそわけ」にあずかろうと建設した博物館で閑古鳥が鳴いている、といったエピソードも聞こえる。

そして特筆すべきは、中国の姿勢だ。過去には制裁に消極的だった中国が、北朝鮮産のレアアースを禁輸にするなど、日米韓などに歩調を合わせる姿勢を鮮明にしている。

それも、だいぶ前から中国に対し人知れずブチ切れてきた金正恩氏にとっては、想定内のことだろう。何しろ、核実験前には中国をワナにかけることを狙っていたぐらいだから、強力な報復を覚悟していなければ、むしろおかしい。


だが、北朝鮮の貿易関係者や一般国民はそうではあるまい。中国企業による投資が盛んな咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、「最近、わが国と中国の関係が良くないので心配していたが、中国企業のただならぬ動きに、住民たちは恐怖心すら感じている。彼らがいなくなったら地元の経済はたいへんなことになる」と不安を漏らしている。

実際、中国企業の撤退の動きは、すでに始まっているようだ。慢性的な電力難と原材料難の中、中国からの投資でようやく命脈を保ってきた北朝鮮企業は少なくない。そこで生活の糧を得てきた人々は、暗澹たる気分なのではないか。

これが民主主義国家での出来事であれば、有権者である国民は、自分たちの生活の糧を奪った執権者を決して許さず、選挙で敗北させるだろう。ところが、北朝鮮のような独裁国家ではそうは行かない。政権批判の声などを上げれば、軍隊に虐殺されるか、政治犯収容所で拷問され処刑されてしまう。


つまり、経済制裁により北朝鮮の核・ミサイル開発を困難にすることはできても、それを推進しようとする独裁者の意思をくじくことが出来るかは未知数なのだ。この点を考えずして、北朝鮮が国際社会に突き付ける問題の根本的な解決は難しい。

より良い生活と未来を渇望する北朝鮮国民の願いと、平和と安定を望む国際社会の利害は一致している。そして、互いの利益を最大化させたところにこそ、核問題の最終的な解決もある。言い方を逆にするならば、北朝鮮の民主化を志向せずしては、朝鮮半島の非核化は難しいのである。


高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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