そう言われてみれば、李雪主(リ・ソルチュ)夫人、モランボン楽団の歌手、若手女子アナと、金正恩時代に登場した女性達に共通して言えることある。ヘアスタイルがショートですっきりとした顔立ちであることだ。こうした女性が、金正恩氏のタイプということか。
いずれにせよ、もともと朝鮮中央テレビのアナウンサー、とくに女子アナは人気職業であり、狭き門を突破しなければ就けない職業だった。加えて、金正恩氏が直接選んでいることもあり、より人気が高まりつつあるようだ。
(参考記事:北朝鮮の女子アナ競争率は150倍! 「話術で気迫を失うな!」こうした金正恩氏のメディア戦略をサポートするのは、実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏と見られている。彼女はプロパガンダを担当する朝鮮労働党宣伝扇動部に所属すると言われているおり、今後も積極的にメディア戦略に関わっていくだろう。
ただし、金正恩・与正氏の兄妹がいくらメディア戦略に力を入れても、北朝鮮のテレビは、どこまでもプロパガンダ・コンテンツが中心で、北朝鮮の庶民からはそっぽを向かれている。番組がつまらないせいで今や、多くの北朝鮮住民は、朝鮮中央テレビには目もくれず、DVDで韓国、中国、そして敵国である「米国」の映画を見ている。
(参考記事:北朝鮮でも「アナ雪」が見られていた! 米雑誌が「平壌映画祭」に潜入取材)金正恩氏が、メディア戦略の過程で女子アナ選びにまで口を出したとしても、それが最高指導者の人気につながったり、格を上げるわけではない。そんなことよりも、北朝鮮国内の人権侵害状況を改善する意思を見せる、または実行に移した方が、北朝鮮の若きリーダーとして、より国際的に評価されるというものだ。
(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。