韓国で制作されたドキュメンタリー映画が「ホモフォビック」、つまり性的少数者に対して差別的だとして、上映会を行った会場へのボイコット運動が行われるなど、波紋を広げている。

この映画はニューヨーク在住の韓国人ドキュメンタリー作家キム・グァンジン氏が撮った「僕はもうゲイじゃない」。(外部リンク【閲覧注意】

配給元はホサンナと韓国教会同性愛対策委員会であるこの映画、ドキュメンタリーという形をとって「元同性愛者」がいかに「同性愛から脱したか」を語らせている。その多くのがプロテスタント信者だ。

また「2年前に韓国で発生したエイズ患者1000人あまりのすべてが同性間の性的接触による」などと事実に反する証言もある。

さらに、カリフォルニア、ニュージャージーなど米国の一部の州では禁止されている「同性愛治療」(Conversion therapy)の様子を肯定的に描くなど、巧妙にホモフォビア(性的少数者への差別)を宣伝するプロパガンダ映画の様相を呈している。また、性的少数者のお祭りである、コリアクィアフェスティバル(ソウルクィアパレード)を隠し撮りするなど、その手法においても問題と言えよう。

自らをクリスチャンだと明かしたキム監督は、米州中央日報とのインタビューで「作品においては宗教的なアプローチを避けようと努力したが、キリスト教が同性愛に最も敵対的なので避けるわけには行かなかった」「彼らに助けの手を差し伸べているのは彼らが最も嫌うキリスト教であることは皮肉だ」などと語った。

一方で、韓国のキリスト教系の日刊紙「国民日報」とのインタビューでは、次のように制作意図を語った。

「同性愛のことを直接聞いて、見たのに、その弊害を語らないのは罪だと思った」
「同性愛者は同性愛を美化している。しかしその末路を見せつけるためにこの作品を作った」
「韓国でも米国でも、親は自分の子どもがどのようなセックスをしているか知らない。それは想像を絶する」
「同性愛は霊の問題だ。韓国の教会は早急に『同性愛治療プログラム』を準備すべき」

この映画は、トレーラーがYoutubeで公開された後、韓国や米国の韓国系教会で上映されている。その中には、前述の「同性愛治療」が州法で禁じられているニュージャージー州の教会も含まれている。

映画に対しては、「差別的」「ヘイトの拡散」などと激しい批判の声が上がり、上映会を行った会場に対してボイコット運動が展開されている。一方で、キリスト教系のメディアは、性的少数者への差別を煽るような記事を掲載している。

韓国のニュース1によると、上映会を行ったのは、ソウル市内の中央大学のそばにあるカフェ「ロバとプラタナス」。店のオーナーは、中央大学の性的少数者サークル「レインボーフィッシュ」のメンバーを歓迎するとSNSに書き込んだ。

しかし、レインボーフィッシュは「参加しない」と明らかにした上で「キャンパスからわずか5分のところで、性的少数者に敵対的な空気を作ろうとする試みは、決して許されない」と、このカフェのボイコット運動を始めると宣言した。

それに対してオーナーは「このような試みが同性愛を傷つけることを初めて知った」としつつも「同性愛は絶対ダメ」などと述べたために激しい批判にさらされた。また、前述の国民日報やクリスチャン・トゥデイなどが「同性愛者の横暴」などと書き立てたため、さらに問題が大きくなった。

レインボーフィッシュは「ヘイト勢力との妥協はありえない」として謝罪と再発防止を求めた。同サークルのみならず、中央大学新聞も「個人の性的指向は他人に干渉されたり侵害されたりする類のものではない」とし、このカフェに設置していた新聞配布用のラックを撤去するなどの対応措置を取った。

韓国では6月に性的少数者など数万人が参加する「クィア・パレード」が行われるが、それに向けて性的少数者と彼らを支援するリベラル勢力、性的少数者に対して露骨なヘイトスピーチを投げかけて激烈な反対運動を行う保守プロテスタントを中心にした保守勢力との争いが激しくなることが予想される。

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