それが信じるに足ると正恩氏が判断すれば、そこで交渉はまとまるはずだ。それだけのカネがあれば、指導者の資質がどうあれ豊かな国作りができるし、核兵器抜きで強力な軍事力を備えられるのだから。
もっとも100兆ドルでは、世界のGDPの合計を上回ってしまう。そんなカネは誰も払えない。では、1兆ドル(約112兆円)ではどうか? やはり、北朝鮮にみすみすくれてやる物好きはいまい。大きく下げて10億ドル(1120億円)なら、「払ってやってもいい」という国はありそうだ。しかしその額では、北朝鮮が要求を飲むまい。では100億ドルなら? もしくは20年分割で1000億ドルなら……。
そうやって妥協点を探って行けば、いずれどこかで折り合いがつく。しかし、人権問題はそうはいかない。仮に金正恩氏が政治犯収容所の閉鎖を決断しても、虐待の末に膨大な人命を奪った罪は決して消えないからだ。
(参考記事:赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた…北朝鮮「政治犯収容所」の実態)そして日本も、民主国家として、そんな国と率先して国交を結ぶわけにはいかない。国連で北朝鮮の人権侵害を自ら告発してきただけに、なおさらである。