北朝鮮では、太陽節(金日成氏の誕生日)、光明星節(金正日氏の誕生日)などの記念日の行事や、大きな政治イベントが開くにあたって「これだけの大成果を得ました!」という報告が欠かせない。その中身は質を伴っていないことが多いが、ともかく形さえ整えばいいのだ。

今年5月に36年ぶりに開かれる朝鮮労働党大会を「革新的成果を持って迎える」ために、各地方には様々なノルマが与えられた。無理な量のノルマで、住民たちは苦しめられている。

転落事故に凍傷まで発生

両江道(リャンガンド)のデイリーNK情報筋によると、現地では水爆実験や衛星発射成功を祝う行事が相次いで行われており、市民全員が出席を求められている。さらに、関連のノルマ達成を迫られており、死亡事故も発生している。

事故が起きたのは1月末のこと。恵山(ヘサン)市の郊外、馬山洞(マサンドン)にある恵山鉱山でのことだ。労働者Aさんは体の調子が悪く、病欠申請を出した。しかし、鉱山の幹部は「5月に開かれる党大会を大成果を持って迎えようと皆一所懸命なのに、なぜ君だけ休もうとするのか」と嫌味を言われ、仕方なしに出勤することにした。

Aさんはただでさえ調子が悪いのに、ノルマを無理やり達成させるために長時間労働をさせられていた。結局、Aさんは足を滑らせて、深さ500メートルの立坑に転落して亡くなった。

一方、白岩(ペガム)郡の林産事業所では、氷点下30度近い極寒にもかかわらず、雪の中で木材生産をさせられていた人々が、足に凍傷を負う事故が発生した。

情報筋は凍傷の程度について言及していないが、ひどい場合は血管内に血栓が生じ、血流が阻害され組織が壊死し、切断を余儀なくされる恐ろしいものだ。

このような無理なノルマ達成を強いられる原因の一つが幹部たちの行き過ぎた「忠誠競争」だ。自らの保身と出世のために、住民を傷めつけて、絞りとれるだけ絞りとって、上役に見せつけようとするのだ。

当然のことながら、市民の不満は高まっている。情報筋は次のように語った。

「国(金正恩氏)が望むことは、党がやれと言えば人民がおとなしく従うことだろうが、ここの人々は『虫も踏みつければのたうち回る』と反抗する意思を見せている」

反抗とは言っても、せいぜいサボタージュが限界だが、ノルマを達成しようと血眼になっている幹部にとっては充分におそろしい抵抗だ。ノルマが達成できなければ、幹部は「虚偽報告」という技を使って、保身を図るしかない。

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