そこで個人業者は、工場からペニシリンの濃縮液とブタノールを購入し、ペニシリンを製造するのだ。製造機械も所有しているというから、決して零細業者とは言えない規模だ。製造されたペニシリンは、別の業者に卸され、そこでアンプルに詰められ、ラベルを貼られて市場の店頭に並ぶ。
値段は1本650から750北朝鮮ウォン(約9.75円~11.25円)。国営工場製の1000北朝鮮ウォン(約15円)に比べると格安で、供給量も豊富なので、よく売れているという。
一方、ペニシリンではなくブドウ糖を入れた「ニセペニシリン」も売られており、知らずに買わされた人が使用して重態に陥るケースもあるという。本来、国が担うべき、医薬品の製造や管理ができていないため、個人業者が製造に乗り出し、その穴を埋める形になっているが、医薬品の供給はできても、管理がなされていない状況には変わりはない。
これが金正恩第1書記がしきりに口にする「人民愛」の実態だ。