韓国政府は16日、北朝鮮当局が外貨稼ぎのために中国や東南アジアを中心に展開する北朝鮮レストランに、韓国人が訪れることを自粛する勧告を出した。

北朝鮮レストランの収入が、核開発やミサイル開発に使われる可能性があり、それを防ぐためだという。先日の開城工業団地の操業停止と同じく、北朝鮮の外貨流入を遮断する目的だ。

この北朝鮮レストラン、通称「北レス」は中国のみならず、東南アジアを中心に展開されている。日本には存在しないせいか、各国の北レスを渡り歩いたり、通い詰める熱狂的な日本人ファンもいる。

筆者も、中国やカンボジアの北レスを訪れたことがあるが、ほとんどの客は韓国人客だった。彼らは、観光バスで大勢で北レスを訪れるのだが、その目的は北朝鮮料理ではなく、「美貌の北朝鮮ウェイトレス」たち。

観光客たちは、北朝鮮ウェイトレスの歌や踊りに拍手し、写真撮影などでも大いに盛り上がる。とりわけ年配の韓国人にとって、今の韓国ではなくなりつつある、朝鮮半島の古風な雰囲気が魅力的に見えるようだ。

ただし、美貌のウェイトレスたちは北朝鮮本国から派遣された女性たちだ。徹底的な当局の管理下で、大多数が「実習生」という名目で実質的にタダ働きさせられ、外出も厳しく制限されている実態もある。北朝鮮レストランのみならず、北朝鮮の海外派遣労働者は、国連でも告発され国際的な人権問題となりつつある。

筆者は北レスを訪れるたびに、店舗内をさりげなく観察するようにしている。すると、美貌のウェイトレスと韓国人たちが大いに盛り上がっているところから、少し離れた場所では、明らかに当局側の人物と思われる女性が、鋭い目つきで監視しているを見られる。

韓国政府によると、北レスの数は世界130以上に達するという。そのうち100軒が中国にある。しかし、中国経済も景気が低迷。店舗に割り当てられたノルマを達成するために、ウェイトレスに強制売春をさせていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

北朝鮮レストランで稼いだ「外貨」を管理するのは、金正恩第1書記の統治資金を管理する労働党39号室だ。年間4000万ドルから1億ドル以上を稼ぎ出していると推測されており、韓国政府はこうした外貨稼ぎにターゲットを絞ったようだ。

しかし、法的拘束力もないため、果たして実効性があるのかどうかは極めて疑わしい。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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