ただし、美貌のウェイトレスたちは北朝鮮本国から派遣された女性たちだ。徹底的な当局の管理下で、大多数が「実習生」という名目で実質的にタダ働きさせられ、外出も厳しく制限されている実態もある。北朝鮮レストランのみならず、北朝鮮の海外派遣労働者は、国連でも告発され国際的な人権問題となりつつある。
(参考記事:北朝鮮レストランの「美女軍団」…大多数がタダ働き)筆者は北レスを訪れるたびに、店舗内をさりげなく観察するようにしている。すると、美貌のウェイトレスと韓国人たちが大いに盛り上がっているところから、少し離れた場所では、明らかに当局側の人物と思われる女性が、鋭い目つきで監視しているを見られる。
韓国政府によると、北レスの数は世界130以上に達するという。そのうち100軒が中国にある。しかし、中国経済も景気が低迷。店舗に割り当てられたノルマを達成するために、ウェイトレスに強制売春をさせていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
(参考記事:中国の北朝鮮レストランで従業員の強制売春が横行)北朝鮮レストランで稼いだ「外貨」を管理するのは、金正恩第1書記の統治資金を管理する労働党39号室だ。年間4000万ドルから1億ドル以上を稼ぎ出していると推測されており、韓国政府はこうした外貨稼ぎにターゲットを絞ったようだ。
しかし、法的拘束力もないため、果たして実効性があるのかどうかは極めて疑わしい。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。