北朝鮮は先月の「水爆実験」と称する核実験につづき、事実上の「長距離弾道ミサイル」を発射した。北朝鮮当局は、大々的に成果として宣伝しているが、国内からは冷笑と不安が入り混じった反応を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

RFAによると、米国在住の50代の脱北者はミサイル発射後、咸鏡北道(ハムギョンブクト)羅先(ラソン)の住民に電話で尋ねてみたところ、次のような反応が返ってきたという。

「住民はミサイルに全く関心を示していない。『打ち上げたいのなら、どうぞご勝手に』と言った反応で、生活の問題にしか関心を持っていない」

中朝交易に悪影響が出るのでは?

「商人たちは先月の核実験の影響で商売が上がったりで泣くに泣けない状況だったのに、今回のミサイル発射で市場の状況がさらに悪化するではないかと心配している」

また、北朝鮮に頻繁にやって来る中国の商人たちは、北朝鮮国内で何か起きるとやって来ないことが多い。核実験の後もしばらくはやって来る商人の数が大幅に減って、物流に悪影響が出たが、今回も同様の状況になるのではないかという懸念が広がっているという。

現地の人々は、外国のラジオや中国に行ってきた人を通じて、核やミサイルのせいで北朝鮮が国際制裁の対象になっていることを概ね知っている。全人口2400万のうち約8割が、何らかの形で市場に関わって生計を立てている北朝鮮で、ミサイルの発射は生活に悪影響以外の何物にもならないということがわかっているのだ。

咸鏡北道の別の情報筋は、核やミサイルで米国や国際社会を脅迫することがいかに危険かを多くの住民は理解していると伝える。当局は「米帝の植民地になり奴隷として生きるのか、苦しくても自主の道を選ぶのか」などと核実験の正当性を訴え、かつては住民も当局の方針に理解を示していた。

「国際社会は北朝鮮を孤立、圧殺しようとしている」

ところが最近では「核やミサイルの開発費用の1%でも人民生活に回せば、暮らしが楽になる」という話が出まわるようになった。 住民からは、「核やミサイルでドル札の束を燃やした」「飢えた軍事大国より、腹いっぱい食べられる奴隷のほうがマシだ」という反応も出ており、核やミサイルが北朝鮮経済をさらなる苦境に追い込む要因との認識が強くなっている。

こうした認識の変化を背景に、当局は、思想教育などで住民の不安を抑えることに必死だ。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、最近開催された政治講演会では「国際社会は、水爆実験を口実に北朝鮮への制裁を強化しようとしている」「北朝鮮を孤立、圧殺しようとする帝国主義者の策動により苦しくなっても、元帥様(金正恩第1書記)を信じて従えば、いくらでも打開できる」などと言った内容だったという。

さらに「元帥様の知恵と胆力、人民に幸せをお与えになろうとする人民愛で難局は去り、国は豊かになる」「苦しい時こそ、一心団結し、革命課業を遂行すべき」などと講演者は語ったという。

住民の反応は冷淡そのものだ。「『団結すれば難局も打開できる』なんて何十年前から言われている」「本当に暮らしが良くなるのならば、経済制裁も怖くないが、暮らし向きは良くなっていない」「毎日たらふく食っている金正恩氏が我々人民の事情など知るわけがない」

そして当局の意図もお見通しだ。「あいつらは『元帥様の知恵と胆力があれば何も怖くない』とか言っているが、講演会を開催すること自体が、制裁の国内への影響を恐れている証拠だ」

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