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北朝鮮では、銀行を利用する人はほとんどいない。全くと言っていいほど信用がないからだ。

故金正日氏が、2009年に行った「貨幣改革」(デノミ)は、拡大しつつあった市場経済を潰し、経済を主導権を国に取り戻すことが目的だったと言われている。

旧紙幣を全額銀行に預けさせ、その一部のみを新紙幣で引き出せるという形にした。つまり、銀行に全財産のほぼ総額を奪われることになったのだ。このデノミによって北朝鮮経済は大混乱に陥いる。市場からは物が消えて、一部地域では餓死者も発生した。

なかには、「どうせ財産を国に奪われるのだから」と大量の旧紙幣を自宅で燃やす人も続出。新紙幣の価値は暴落し、ハイパーインフレが起きた。これをきっかけに、北朝鮮ウォンと銀行は信用を全く失ってしまった。今や、銀行におカネを預ける人は「バカ」扱いされるほどだ。

北朝鮮の銀行は、海外に住む朝鮮人、韓国人の間でも信用を全く失っている。その理由は驚くべきものだった。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、かつて、貿易銀行と合営銀行の2つが外為業務を扱っていた。

在日朝鮮人は、日本の「朝銀信用組合(朝銀)」などを通じて、北朝鮮に住む家族や親戚に送金をしていた。在米朝鮮人もこの2つの銀行を利用していた。

ところが、90年代初め頃、北朝鮮当局は「経済が苦しい」との理由で、送金額の10分の1しか渡さなくなったというのだ。また、その10分の1も外貨の現金ではなく「パックントン」と言われる外貨兌換券で渡すようになった。この外貨兌換券とは、貿易銀行が発行するもので、外貨と同じ価値を持つとされていた。

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しかし、国内使用で問題はなくても、いつ価値や効力を失うかわからない外貨兌換券では貯蓄する意味がない。貯蓄するには、ヤミで改めて両替する必要があった。

その外貨兌換券すら、90年代中頃には渡されなくなった。つまり、海外から受け取った送金は国が「全額没収」という、理不尽な方針が示されたのだ。ある家族は、合営銀行を訪れ、窓口の前で「500万円を返せ!」と泣きわめいていたという。

当然のことながら、合営銀行も貿易銀行も国内外での信用を完全に失った。日本や米国に住む朝鮮人は全く利用しなくなったという。

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北朝鮮当局は、その状況を打開するために、外為業務を行う地方銀行を設立したが、信用が得られるかは未知数だ。