梅雨が明けて、日差しが強く照りつける暑い季節になった。韓国の伝統的な四季のうち、もっとも蒸し暑い「三伏」の季節になった。「初伏」は先週の14日、「中伏」は24日、「末伏」は来月の13日だ。

北朝鮮でもこの三伏の暑さのことを、しばしば「犬も舌を横に噛む」と表現するほど暑くなる。またこの蒸し暑い夏の真っ盛りに、「(陰暦の)5月と6月のケジャングク(犬肉の煮込み汁)は足の甲に落ちても補薬だ」と言う。そして周囲の人と「三伏の暑さには犬肉のスープが最高だ」と話すのである。

韓国に来た脱北者たちも、伏日には北の故郷で母が汗をかきながら作ってくれた犬肉のスープの味がしきりに思い浮かぶと言う。韓国には犬肉を食べない人がとても多いが、北朝鮮にはそう多くない。肉が不足しているので、犬肉を嫌う理由もないからだ。

ここ(韓国)では犬肉スープのことを補陽湯(ボヤンタン)もしくは補身湯(ボシンタン)という。北朝鮮でも補身湯(韓国では主にこう呼ぶ)という言葉を使うことは使うが、「タンコギグク(犬肉スープ)」と呼んでいる。

北朝鮮でも最初は「ケコギグク(犬肉スープ)」と呼んでいたが、外国人が「犬醤屋」と書かれた看板を見て嫌悪感を見せたという話が出回ってから、金日成が名前を「タンコギグク」に変えるよう「方針」を下し、1985年ごろから呼び方を変えるようになった。

北朝鮮では苦難の行軍(1990年代半ば)以前は、多くの家で三伏のうち1日、タンコギグクを食べていた。

北朝鮮の人たちはタンコギがどれほど好きなのかと聞かれたら、筆者は「2人で食べていて1人が死んでも気づかないほどおいしい味」と本当に答える。韓国に来て周囲の人がすすめてくれた美味しい料理を何度か食べてみたが、北朝鮮で食べたタンコギほど美味しく力になるものはなかったと思う。

タンコギはスープ以外に、茹でて食べたりロース煮、モツ炒めなどにして食べる。

脱北者はここで補身湯の食堂に行く時、北朝鮮で食べた味を思い出す。それだけ期待も大きい。

数日前に脱北者の友達と一緒に、犬肉を食べるために食堂に行った。その店の看板にはユッケジャンと書かれていたので、ケジャングクだと思ったのだ。そして食堂に入って、ユッケジャンを注文した。

だが、おもしろいことが起きた。犬肉で作ったユッケジャンだと思ったのだが違った。牛肉を唐辛子やワラビ、エゴマの粉を一緒に入れて煮たものが、一つの器に入って出てきた。ユッケジャンに「ケ(犬)」という文字が入っていたので犬肉と思ったのだが、一瞬、狼狽してしまった。

犬肉料理の作り方

北朝鮮にも牛肉を煮たスープがあるが、ユッケジャンとは呼ばずに、ただ牛肉スープと言う。 昔、1980年代末まで鉱山の労働者や軍の特殊部隊、高位の将校たちには牛肉が一部配給された。

もちろん、一般の住民は見ることもなかなかできなかった。牛は個人が育てることができないだけでなく、生産手段をむやみに捕まえたら重刑を免れることができないからだ。

北朝鮮のタンコギグクは、味が特別に美味しくて甘いことで有名だ。南と北では作り方が違う。北朝鮮でタンコギグクを作る過程を見てみよう。

まず、大きな釜に水をいっぱい注いで、きれいに手入れをした犬肉を4〜5切れに切って釜に入れて茹でる。この時、ただ湯がくのではなく、肉が骨から取れるくらい茹でる。

そしてタレを準備する。北朝鮮のタンコギグクの味はこのタレの味そのものといえる。

まず、犬肉から脂身を取り除いて、包丁でみじん切りにして油で炒める。

そして細く切ったネギやニンニク、塩、唐辛子、香りを出すための草、ごま油などを釜に入れる。こうして作ったものは普通「おかゆ」と呼ばれる。犬肉のタレだ。

その次に、箸で釜の中の肉にちゃんと火が通っているか確認した後、鉄の網で肉をすくい出す。スープの釜は沸かした状態でそのままにしておく。

釜でよくゆだった肉から骨を抜き出して、また釜の中に入れて浸しておく。また、肉は手で食べやすいように裂いておく。

犬肉恋しさに「夜も眠れない」

その次に、器に肉を入れてよく沸いたスープを注いだら美味しいタンコギグクのできあがり。韓国の山海の珍味をすべて入れても、このタンコギの味とは比べ物にならない。タンコギを食べることができない外国に行っても、タンコギが食べたくて耐えられないほどだ。

いつだったか、外国に出かけたという父が帰ってきて話していたが、その国の人たちは宗教儀式の供え物として動物を神聖化する国だったので、犬肉も自由に食べることはできなかったという。だが、父といっしょにいた朝鮮の人たちは、犬肉が食べたくて眠りにつくこともできないほどだったそうだ。(つづく)

【連載-下-】「犬の運命」にも南北で大きな差

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