金正恩氏は、新年の辞で「わが国の自主権を尊重し、わが国に友好的に接するすべての国との親善・協力関係を発展させていく」と述べており、今回の政府声明にも「われわれの自主権を侵害しない限り、すでに宣言した通り、先に核兵器を使用することはなく、いかなる場合でも、関連手段と技術を移転することはないだろう」と述べている。
(参考記事:金正恩氏による2016年の「新年の辞」全文)つまり、北朝鮮は「核放棄」という選択肢を放棄、すなわち対話が成立しない米国を中心とする国際社会と共同歩調を取ることを放棄し、核保有を含む自らの自主権を尊重する国家とだけ関係を築いていくとも読み取れる。
北朝鮮が、本気でこうした道に進めば、今までの国際社会のあらゆる圧力の効果は限定的にならざるをえないだろう。そして、核問題だけでなく、北朝鮮に関連するあらゆる懸念問題、例えば日本人拉致問題などの解決は、より遠のきこれまで以上に八方ふさがりになりかねない。
こうした事態を打開するためにも、本気で北朝鮮体制の変革を考えなければならない時期にきているのではなかろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。