68 強制失踪者の中には自発的に北朝鮮に渡航した者も多い。物理的強制力又は騙されて拉致された者もいる。その結果、彼らは皆北朝鮮を離れる権利を否定された。さらに、自由及び北朝鮮国内の移動の自由も大幅に奪われ、法の下において人として認められる権利、及び拷問やその他残忍、非人道的又は名誉を傷つけるような処遇に晒されることのない権利も否定されている。全ての強制失踪者は、厳重な監視下に置かれている。教育及び雇用の機会も否定されている。
69 韓国や日本から北朝鮮によって強制失踪させられた朝鮮系の人々は、その素性及び背景に対して差別を受けている。「敵対階層」と分類され、北朝鮮辺境の炭鉱や農場で働かされた。社会的地位が低かったため、彼らの多くが1990年代の飢饉における最初の犠牲者となった可能性が高い。
70 非朝鮮系の拉致被害者は、厳重に管理された敷地内に拘束されていたため、北朝鮮の社会的及び経済的生活に溶け込むことはできなかった。働く権利、居住地を離れる権利又は地域社会を自由に移動する権利を否定され、自分もその子供たちも教育の機会を選択することができなかった。
71 外交的保護の発動にかかる権利を行使しようとする海外にいる被害者の家族及び被害者の母国である外国政府は、被害者の安否及び所在を確認するために必要な情報の提供を北朝鮮から一貫して拒否されている。強制失踪者の家族は、拷問やその他残忍、非人道的又は名誉を傷つけるような扱いを受けてきている。彼らは真実を知る権利を含む人権侵害に対する適正な救済の権利を否定されている。強制失踪者の両親及び失踪者である子供は、家族生活を営む権利を奪われている。