北朝鮮は鉱物資源の宝庫だ。韓国統一省の資料によると、経済的価値のある鉱物だけでも140種類に及び、その潜在価値は6984兆ウォン(約720兆円)に達すると言われている。中でも金(ゴールド)は埋蔵量が2000トンにおよぶ。

技術が低く施設の老朽化が著しい上に、新たな鉱山開発の資金が不足しており、外国企業の投資もあまり得られていないため「宝の持ち腐れ」状態となってはいるが、日本を除く世界各国の企業が、「知られざる鉱物大国」北朝鮮の資源を虎視眈々と狙っている

その北朝鮮で、大規模な金密輸事件が発覚し、多くの容疑者が逮捕されたが、なぜか事実上の無罪判決が下された。その内幕を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、被告たちは数年に渡り、中国の貿易業者から得た数億人民元(1億元は約18億8300万円)を元手に、北朝鮮国内で金をかき集めて、中国に密輸していた。北朝鮮では、一般人の金の所有、売買は禁止されている。金は労働党の資金とされているためで、違反した場合は政治犯扱いされるという。

今回の事件で逮捕されたのは道内だけでも12人に及ぶ。11月中頃、清津(チョンジン)市内の競技場で、公開裁判が行わなれ、市内の各機関、企業所から市民数万人が動員された。裁判は「公開闘争」という形で行われた。これは、様々な人が順番に被告の罪を批判する, いわゆる「人民裁判」だ。

北朝鮮の裁判は二審制だが、この裁判は一審から最高裁判所が審理を担当した。裁判官は「金の密輸は労働党の資金を横領した重大な犯罪行為で、絶対に許されない」とし、被告に対し懲役5年から18年の判決を言い渡した。

裁判を見守っていた被告の家族や市民は、死刑ではなく懲役刑であったことに胸をなで下ろしていたというが、重い刑であることには代わりはなかった。ところが、二審では「刑の白紙化」つまり事実上の無罪が言い渡された。

判決の詳しい根拠は定かではないが、白紙化の理由を法廷は「金正恩元帥様のご配慮」と説明したという。判決を聞いていた一部市民は、驚きと感動のあまり「金正恩元帥様万歳!」と叫びだしたという。まさに金正恩氏の狙い通りのリアクションだった。

金正恩氏は「重大な犯罪者を赦す慈悲深い指導者」というイメージを植え付け、国民からの支持を得ようとしたのだ。しかし、事実上の無罪判決の理由はそれだけではない。国内のどこかに隠されている数億元の資金の在り処を聞き出し、国庫に入れようとしているのだ。

咸鏡北道の別の情報筋によると、最近金正恩氏は、朝鮮労働党組織指導部と保衛部(秘密警察)に対して「不正腐敗を根絶せよ」との指示を下した。その理由は「貧富の格差をなくす」とされているが、真の理由は資金の在り処を突き止めることにある。

一方、巨額の投資金を数年にわたって投資してきた中国の業者は、残りの資金を回収するために、北朝鮮の高級幹部が関与した事件を暴露することで、北朝鮮当局に圧力をかけているとのことだ。

北朝鮮の金鉱地帯では、1990年代初頭から中国の業者とつながった「金密輸組織」が暗躍してきた。密輸には、すべて国営のはずの金鉱を所有し、莫大な利益を上げているトンジュ(金主、新興富裕層)が関連しているものと思われる。

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