中国共産党は北朝鮮の女性音楽グループ「牡丹峰(モランボン)楽団」を引率してきた朝鮮労働党との高官どうしの会談の写真をホームぺージから削除した。北朝鮮側が楽団に公演を「ドタキャン帰国」させたことに対する中国側の不満の表れとみられる。

ドタキャン帰国の理由は今もって不明だが、説得力を帯びて語られている見方のひとつが、金正恩氏の「水爆保有」発言が問題になったというものだ。この発言に中国側が不快感を示し、公演を観覧する幹部を大幅に格下げ。これに激怒した金正恩氏が「報復」に出たとする見方だ。

これが事実であれば、何ともガッカリな話だ。

北朝鮮の行動が幼稚なのは言うまでもないが、筆者はむしろ、中国側の大人気なさを指摘しておきたい。

なぜ、中国側が大人気ないのか。それを知るにはまず、北朝鮮の核問題を巡る「不都合な真実」を認識する必要がある。

1990年代前半に朝鮮半島で第1次核危機が起きてから、すでに20年以上が経った。その間、日米韓中露など主要国は北朝鮮の核開発を批判し続けてきたが、結果はどうか。

北朝鮮は実質的に核武装を成し遂げ、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射ミサイルを開発する段階に進んでいる。

つまり我々が認識すべき「不都合な真実」とは、北朝鮮は自力で核武装を成し遂げる意思と能力を十分に備えていたが、日米韓中露の側には、それを抑え込む意思と能力が欠けていたということだ。

もちろん、主要国とて何もしてこなかったわけではない。かつて日本は、北朝鮮の核開発を巡る諜報戦の「主戦場」のひとつだった。朝鮮総連の秘密送金が開発資金なっていると見たCIAと警察庁は、極秘の「捜査マニュアル」を作成。強制捜査に踏み切り、朝鮮総連と激突を繰り返した。

しかし、そんな「熱い時代」はとうに過ぎ去ってしまった。北朝鮮が核実験を行って以降はむしろ、主要国の政治にも世論にも投げやりな空気が見える。

金正恩氏の水爆発言にしても、真剣に取り合う雰囲気はない。しかし、「最終兵器」とも言うべき水爆の破壊力の恐ろしさを考えれば、そんな悠長なことではダメだろう。北朝鮮が水爆開発に取り組んでいる徴候は現に表れているのだ。

主要国は、北朝鮮の行動を抑え込む「能力と手段」の開発に今から取り組まねば、これまでの20年間と同じ失敗を繰り返し、より大きな脅威と向き合うことにもなりかねない。

現にいま、日米韓はその思惑のズレから、金正恩氏に時間的余裕を与える形になっている。

いま、北朝鮮問題で中国に期待することがあるとすれば、金正恩氏をよりよく把握し、北朝鮮の深奥に意思疎通のルートを確保することだ。そのためなら、「水爆発言」の1回や2回、大したことないではないか。

もっとも、ドタキャン帰国の原因が「水爆発言」のほかにあったなら話は別だ。実は、公演が予定されていた12月12日に中国は「忌まわしい記憶」を持っており、金正恩氏は、それを敢えて刺激しようとしていたフシがあるのだが、それについては次回、具体的に述べることにする。

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