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北朝鮮の医科大学に衛生学部と薬学部が存在するが、両学部は医学部に比べると不人気だった。成績は優秀だが、コネも力もない家庭の子どもが、否応なしに行く学部だった。しかし、最近では医学部よりも人気が高いとデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。

平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋は語る。

「北朝鮮では大学を卒業すると、就職先は国が決めるシステムだ。ここで、どこに配置されるかで収入が大きく変わる。衛生学部、薬学部に人気が集まっているのは、権限を持つ職場に配属され、ワイロがもらえたり、物資を横流しできるからだ」

情報筋によると、衛生学部の卒業生は「衛生検査所」、つまり国境の検疫業務を担当する組織に配属される場合が多い。すべての輸出入商品は、衛生検査所で検査を受けなければならない。貿易業者は、面倒な検査の手続きを避けるため、イルクン(職員)にドルや品物を掴ませて書類を発行してもらうのだ。

さらに、道(行政区)や市、郡の衛生検査所では、列車に乗るために必要な「疫学証明書」の発行を行う。この面倒な手続きを避けるため「ほとんどの人が、ワイロを使って書類を発行してもらう」と、情報筋は付け加えた。

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北朝鮮には、公害を監視する「公害監視課」というセクションが存在する。同課の監視員になれば、鉱山、製鉄所、精鋼所、化学工場などで、汚染物質が垂れ流しにされていないかを検査する。

検査基準に違反していれば、罰金刑や、機械に赤札を貼って使用禁止にする。この際、企業所(工場)の責任者は利益を優先させるため、監視員にワイロを渡して見逃してもらう。こうして衛生学部を卒業すれば「おいしい仕事」にありつけるというわけだ。

一方、薬学部出身者は国営病院の医薬品管理所に配属される。ここでは、「国連薬」と呼ばれる国際機関から援助された医薬品を取り扱っているため、これを市場に横流しするだけでも大儲けができる。

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「薬学部を卒業して病院に勤めても、退職して市場で医薬品を製造、販売する人も増えている。国が管理する病院には薬が不足しているので、多くの住民は市場で購入するのが当たり前だ」(平安南道の内部情報筋)

つまり、病院よりも薬剤ビジネスが成立する市場で、薬学部出身者は稼ぐのだ。

社会主義国家では、資本主義国に比べると、医師の社会的地位は低かった。北朝鮮では、平壌医大や各地方の医大を出て医者になれば、安定した生活を送れると言われてきたが、90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降は、配給システムや無償医療システムが崩壊。病院勤めでは、生活がままならなくなった。

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医療崩壊が著しい北朝鮮で、腕のいい医者は自宅に病院を開いて患者を診察している。国営病院より質がよく、ワイロも要らないために民間の病院のほうが人気を集めている。

また、多くの医師が国営病院を退職して、市場で商売に勤しんでいる。既に、市場で薬を販売する人の約9割が元医師だとも言われるぐらいだ。