韓国の最高学府ソウル大学の「総学生会」(学生自治会)の会長選挙が行われ、レズビアン(女性同性愛者)であることをカミングアウトした女子学生が会長に選ばれた。

ソウル大学総学生会長に選ばれたキム・ボミ候補(画像:ソウル大学総学生会)
ソウル大学総学生会長に選ばれたキム・ボミ候補(画像:ソウル大学総学生会)

今回の選挙で当選したのは児童家庭学専攻のキム・ボミ候補だ。他に候補者がおらず信任投票となった今回の選挙では、学生の86.8%が賛成票を投じた。韓国では、総学生会は単なる学生自治会ではなく、社会的に大きな影響を与えてきたこともあり、各メディアが一斉に報じた。

キム候補は公示前の今月5日に行われた座談会で、自らがレズビアンであることをカミングアウトしている。また、「多様性に向けた一つの動き」というテーマを掲げて、多様性が確保される大学を目指すとした。

キム候補は学生生活の向上のための様々な公約を発表している。例えば、学内への密閉喫煙ブースの設置、サークル活動のための設備の設置などを挙げているが、注目を浴びたのが「新入生に対する(プロテスタントの)不快感を与える布教活動を控えさせる」というものだ。

キム候補は「新学期には、新入生や学生寮の新規入居者をターゲットに先輩だと名乗り新入生を心理的に断りにくくしたり、つきまとったり、延々と話しかけたりして不快感を与える人もいる」などと説明している。

さらに「部外者である教会関係者が学生寮に無断侵入する事例がある」「請願警察と協力、無断侵入する『伝道者』に対して制裁を加える」と、強い姿勢で臨むことを公約に掲げている。

実際に韓国の大学に留学していた外国人学生は次のように語る。

「キャンパス内のベンチで試験勉強していたら、CCC(プロテスタントサークル)のメンバーがやって来て『教会に行こう』などと迫ってくる。いくら断っても引き下がらず、とにかくしつこい。多い日には1日に3回はやって来る」

「一度は『カトリック教徒だ』と嘘を言ってみたことがあったが『カトリックは邪教だ』と火に油を注いでしまった。あまりのしつこさに、怒鳴り散らしてその場を去った」

この公約に噛み付いたのが、保守プロテスタントだ。いつもなら、ヒステリックなホモフォビア(同性愛嫌悪)を撒き散らし、キム候補の性的指向に対するヘイトスピーチを行うところだが、今回は少し作戦を変えてきた。

キリスト日報は、この公約が「学内で問題になっている」と伝えた上で、ソウル大学のキリスト教サークルと韓国キリスト教青年学生連合会が、キム候補に対して行った質問の内容を掲載した。

その質問とは「布教と布教に伴う被害とは何か?」「布教に伴う被害の事例の収集方法、その経路、深刻さに関する統計などはあるのか?」などと、もはや逆ギレと言ってもいいものだった。

その質問に対してキム候補は「まだ調査中だ」と答えたが、それを同紙は「根拠がないことが明らかになった」と伝え、最後には「彼女はレズビアンである」と付け加えている。

このようなあからさまなネガティブキャンペーンも功を奏することなく、キム候補は圧倒的票差で当選した。保守プロテスタントが露骨なヘイトスピーチを控えたのは、今の韓国の学生には効果がないばかりか逆効果になると判断したのかもしれない。

コリアギャロップ社が2013年4月に実施した調査では、同性婚に賛成する人が25%、反対する人が67%で、反対が多い。しかし、30代では賛成40%、反対53%、19歳から29歳では賛成52%、反対38%で、年齢が下がるにつれて賛成の割合が増える傾向にある。

一方、キリスト教倫理実践運動の依頼で、グローバルリサーチ社が2013年に行った「韓国教会の社会的信頼度世論調査」によると、プロテスタントを信頼する人は60代では26.3%に達するものの、20代は12.9%と、若い層では信頼度が非常に低い。

つまり韓国の若者の間では、性的少数者に対する偏見は薄まりつつある一方で、プロテスタントに対する反感が高まっているのだ。実際、保守プロテスタントの激しい攻撃にさらされた性的少数者のお祭り「ソウル・クィア・パレード」の現場では、「興味はなかったが、あいつらに攻撃されていると聞いて参加した」という20代が多くいた。

「若者の教会離れ」に保守プロテスタントは危機感を強めているが、動けば動くほど逆効果が出る。それは他人の人権をないがしろにしている自分たちが招いたことだが、自省の声はあまり聞かれない。

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