米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は9月、北朝鮮両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市に住む女性3人が携帯電話で韓国と通話した罪で銃殺されたと伝えたが、その後の追加取材で、銃殺理由が「韓流ドラマの複製、流布」たったと報じた。

いくら北朝鮮当局といえども、ラブストーリーや時代劇などの韓流ドラマを流通させた程度で処刑されることはない。今回、銃殺という厳罰に処されたのは、彼女らが販売していた韓流ドラマが当局にとって極めて都合の悪いいわくつきのものだったからだという。

金正日氏の派手な性生活

RFAの現地情報筋によると、女性3人の処刑の話は人民班(町内会)の会議で伝えられた。韓国への通話が摘発された場合、通常3年から7年の懲役刑に処されるが、ワイロを掴ませて釈放されるケースもあるなど、決して処刑されるほどの重罪ではないというのが、北朝鮮での一般的な認識だ。

現地の住民も「携帯電話をちょっと使ったぐらいで処刑されるなんて」と衝撃を受けた様子だったが、最近になって罪状が「韓流ドラマのコピーと流通」ということが明らかになった。

処刑されたの3人姉妹とその義理の姉。1つ6万北朝鮮ウォン(約900円)で売られている中国製の6GBのUSBに、映像ファイルを保存して、1つ30万北朝鮮ウォン(約4500円)の高値で密売していたが、その韓流ドラマが1998年に韓国KBSで放送された「ツツジの花が咲くまで」だったが、これが直接的な銃殺処刑の理由だ。当局は、罪状を明らかにすることが、逆にドラマへの好奇心が高まることを警戒して事実を隠蔽したのだ。

ドラマ「ツツジの花が咲くまで」は、1995年に脱北し韓国に亡命したシン・ヨンヒ氏のエッセーをドラマ化したもので、脚本を担当したチョン・ソンサン氏も脱北者だ。

内容は「喜び組」の日常を描いたもので、金正日氏の豪遊ぶりや派手な性生活を描いたものだ。後に原作者から「ドラマの内容はエッセーからかけ離れ、刺激的過ぎる」との理由で訴えられたこともあり、現在その内容を確認することはできないが、相当に刺激的なものだったと見られる。

最高指導者の性生活を描くドラマを、北朝鮮は許すわけがない。北朝鮮当局は様々なメディアで非難を始めた。当時の韓国メディアによると、1998年11月16日の平壌放送は論評番組で、ドラマを制作したKBSを次のように非難した。その激しさはもはや脅迫レベルだ。

「ペテンメディアのクズどものくだらない反北謀略劇」
「KBSはメディアの本分を忘却し、民族の間に不和を煽り、対決、分裂、戦争を煽動する許しがたき反逆行為を行っている」
「我々は、KBS第2テレビ創作団を無慈悲に爆破し、その存在自体をあの世送りにする」
「ドラマ創作に加担した者は皆殺しにする」
「こんなドラマを作ったことは、我々に対する一種の政治的宣戦布告だ」

警察当局は、北朝鮮のテロを警戒してKBS本社を厳戒警備するなど、大騒ぎになった。また、ソウル市内では「KBS爆破闘争に参加しよう」と書かれたハガキと金正日氏の写真が路上で発見されるなど、韓国社会は戦々恐々とした雰囲気に包まれた。

韓国の人々は「たかがドラマぐらいで…」との反応を示したが、北朝鮮において金一族を冒涜する行為は「万死に値する」もので決して許されない。

両江道の情報筋は「このドラマ(ツツジの花が咲くまでに)のストーリは知らないが、命がけで見るほどのものなのか?」とRFAに逆に質問するほど、具体的なドラマの内容はまだ知られていないようだ。

昨年末、北朝鮮はハリウッド映画「ザ・インタビュー」に対しても金正恩氏を誹謗中傷したと非難しながら、住民に対して「絶対に見るべからず」と警告を発した。ところが、映画の説明をしなかったために、かえって住民の好奇心を誘発するという皮肉な結果を生んでしまった。

今回の事件に関する、両江道当局の対応は、その反省を踏まえたものかもしれないが、「ツツジの花が咲くまでに」に対する住民の好奇心が高まるのは時間の問題だろう。実際、平壌の大学生の間ではこのドラマが流行し、見た学生が収容所送りになっている

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