北朝鮮は8月の軍事危機でまんまと韓国との「チキンレース」に敗れ、金正恩氏の権威も著しく傷ついた。韓国に対してこの「借り」を返すことなしに、独裁を維持するのは難しい――正恩氏がそのように考えても、何ら不思議ではないのだ。
実際、過去にも似たようなことがあった。
北朝鮮海軍は1999年から2009年にかけて、韓国海軍と3回にわたり海戦を繰り広げ、続けざまに敗北。大量の戦死者を出した。
ここで金正日―正恩親子が取った措置が、前線に朝鮮人民軍きっての「闘将」、金格植(キム・ギョクシク)氏を投入することだった。同氏はその「期待」に応え、韓国軍艦艇を撃沈したり韓国領土を砲撃したりの暴挙を繰り返し、南北の攻守逆転を主導した。
北朝鮮は最近、航行禁止区域の設定を繰り返すのと合わせ、韓国軍と対峙する前線の軍団長も交代させている。もっとも、正恩氏がささいな理由で側近たちの処刑を繰り返しているせいで、軍も行政も人材難に陥っているとの見方もあり、果たして金格植氏ほどの大暴れができる軍人が残っているかは未知数だ。