日本人ジャーナリストの後藤健二さんが武装勢力「イスラム国(IS)」に拉致された事件で、安倍政権の対応に批判が集まったことは記憶に新しいが、リビアで北朝鮮人が拉致される事件が起きている

今年5月の中旬に、リビアの病院で勤務していた北朝鮮出身の医師夫婦が自宅に戻る途中、ISと思われるグループに拉致された。

現地の北朝鮮大使館は、拉致被害者の安否を確認するために各グループとの接触を図るなど情報収集には当たったが、実質的には「見殺し」にしているようだ。

「愛国者」なのに…

北朝鮮の情報筋は米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に次のように語る。

「夫婦を拉致したグループは北朝鮮大使館に『数十万ドルを払えば解放してやる』と要求を突きつけたが、大使館は応じなかった。行方についてはわからない」(RFAの情報筋)

拉致された夫婦は、リビアの首都トリポリに住居を構え、中東各国の病院に北朝鮮の医師を送り込む人材派遣業を営んでいた。また、リビアとクウェートを行き来して様々な商品を売って、儲けた金を北朝鮮の国家に捧げていた「愛国者」だったが、大使館はあっさりと見殺しにしてしまった。

10月10日の朝鮮労働党創建70周年記念行事に必要な外貨を、国中が血眼になってかき集めていた状況で、数十万ドルの身代金を一般人民の救出に使えないという判断があったのかもしれない。

事件が北朝鮮当局に与えたショックは大きいようだ。その後、当局は各国駐在の大使館を通じて海外駐在員や貿易関係者に「決められた居住地域から離脱せず、外貨稼ぎに励め」という指示を下した。

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