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中朝国境を流れる鴨緑江に面した北朝鮮の都市、新義州(シニジュ)市。新築マンションが多数建てられ、不動産ブームが到来していることは対岸の中国からも確認できるほどだ。

一方、中心市街地から3キロ南にある「南新義州」では、不動産価格の下落が続いていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じる。

匿名の北朝鮮住民が明かしたところによると、2010年頃まで、南新義州の2部屋付きのマンション価格は3000~4000ドルだったが、2013年には1万ドルまで高騰した。新しく建設されていた「新鴨緑江大橋」の開通が見込まれたからだ。

新鴨緑江大橋の建設は2011年10月に始まった。開通すれば貿易の中心は、新義州の中心市街地から新しい橋により近い南新義州に移ると見られていた。事実、朝鮮人民軍は、傘下の外貨稼ぎ会社にオフィスを南新義州に移転させるよう指示し、南新義州駅周辺にオフィスと倉庫を建設した。

しかし2013年12月、中朝のパイプ役だった張成沢(チャン・ソンテク)氏が処刑され中朝関係には暗雲が立ち込めはじめる。

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2014年10月に橋の工事は完了したが、中朝関係の悪化により橋と南新義州を結ぶ連絡道路や税関施設が一切建設されないまま今現在に至っている。これが不動産価格にも悪影響を及ぼす大きな要因となった。

新鴨緑江大橋への期待はしぼみ、南新義州の不動産市場の熱気はすっかり冷めてしまった。1万ドルだったマンションも5000ドル代まで下落した。もはや外貨稼ぎ会社も投資金額を回収できない状態だ。

別の貿易関係者は「新義州の貿易会社はどこも新鴨緑江大橋の開通時期など気にしなくなった。老朽化したものの、今も鴨緑江大橋でなんとかしのげる」と語った。

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南新義州は、1970年代に国境地帯を訪れた金日成氏、金正日氏の「外国人が訪れる国境にふさわしい都市を作ろう」との提案で建設された。当初の計画では、5000戸のマンション、高級ホテル、空港に加えて、中心市街地と結ぶ地下鉄まで建設する予定だった。

しかし、「対外宣伝用都市にするには保安上の心配がある」との理由で計画は縮小され、単なるニュータウンに転落した。その南新義州が再度脚光を浴びたきっかけとなったのが、2002年に発表された「新義州特別行政区」プロジェクト。新義州を北朝鮮の法律が適用しない香港のような特別地域にして、海外からの投資を呼びこもうとする野心的なプロジェクトだった。

この一環として、中心市街地の10万人を移住させるため南新義州に大々的な団地を建設する計画も立ち上がったが、行政長官に任命されていた中国系オランダ人の楊斌が、脱税容疑で中国当局に逮捕されプロジェクトは頓挫する。

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新鴨緑江大橋は、南新義州にとっては「三度目の正直」といえる開発事業だったが、張成沢氏処刑に端を発した中朝関係の悪化で先行きは見えない。

猫の目のように変わる北朝鮮当局の政策は、南新義州に限らず北朝鮮不動産市場のリスク要因でしかない。