朝鮮半島の伝統的な暖房と言えば「オンドル」だ。かつては焚き口に薪をくべて火を付けて床を暖める方式だったが、植民地時代から練炭が普及し始めた。しかし、韓国では90年代以降、練炭からガス、電気、灯油のオンドルが普及し、練炭は多くの家庭から姿を消した。

1980年代初頭には、韓国の半数以上の家庭で練炭が使われていたが、ソウル練炭バンクの2014年の調査によると、韓国の2094万世帯のうち、練炭を使っているのは16万8400世帯で、全世帯の0.8%まで下がった。

一方、正確な統計はないが北朝鮮ではオンドル用の燃料としては練炭が一般的だ。練炭ボイラーで水を温めて、床下に設置したホースや銅パイプを通じて熱を上げる。この方式で使用されるホースだが、なぜか「韓国製ホース」が人気を集めているという。 平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は「1980年代まではオンドル用に鉄パイプが使われていたが、熱効率が悪く腐食がひどかった。徐々にビニールホースや銅パイプに取って代わられた」と語った。

ホースには、平壌や咸興(ハムン)の工場で作られた国産品や、中国製のものがあるが、温度変化に弱く、破裂が起きるケースがある。仮に破裂すれば部屋中が水浸しになり、修理が済むまで部屋もオンドルも使えないという、極寒の北朝鮮では、死にも繋がる一大事だ。こうした背景のなか、韓国製ホースがバカ売れしているという。

韓国製ホースは、熱水が通っても伸び縮みしないため、腐食も破裂もほとんどない。開城(ケソン)工業団地経由で持ち込まれたりするが、大多数が中国経由で輸入される。

1メートルあたりの価格は、北朝鮮製が500北朝鮮ウォン(約7.5円)、中国製は1000北朝鮮ウォン(約15円)だが韓国製は5000北朝鮮ウォン(約75円)。国産品の10倍でかなり高価だが、質がいいことから大売れして売り切れが続出しているという。

たかがホースといえども自国の優位性を強調する北朝鮮当局からすれば、韓国製は禁制品だ。しかし、床に埋め込んでしまえば当局にバレることもなく安心して使うことができる。「床下韓流」は徐々に広がりを見せている。

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