中国には中国国籍を持った朝鮮系の「朝鮮族」以外にも、純粋な北朝鮮の国籍「朝鮮籍」を持った「朝僑」と呼ばれる人々がいる。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮当局は朝僑に対しても「忠誠の資金」と称して献金を強要している。

中国の朝僑事情に詳しい情報筋によると、彼らは瀋陽に本部を置く「在中朝鮮人総連合会」の管理下に置かれる。太陽節(金正恩氏の誕生日)や光明星節(金正日氏の誕生日)に北朝鮮当局から「忠誠の資金」を差し出すことを要求されるが、朝僑たちも従わざるをえない。なぜなら中国の在留資格の問題があるからだ。

朝僑が持っているのは有効期限が10年の北朝鮮のパスポートだ。北朝鮮の大使館から「長期出国ビザ」をもらわなければ、中国の「長期滞在ビザ」をもらえない仕組みとなっている。むろん、パスポートがなければ北朝鮮に帰国せざるをえない。

こうした状況のなか、別の情報筋は「北朝鮮当局が忠誠の資金を要求する頻度がますます高まっているが、外貨事情がより苦しくなっているようだ」と話す。

朝僑は遼寧省、吉林省、黒竜江省など東北地方を中心に4000人から5000人ほどいると言われている。中国での北朝鮮のイメージが悪いため、彼らは朝鮮族や漢族のふりをして暮らさざるを得ないという。また、医療保険や養老保険が適用されないなど不便も多い。

本国からの理不尽な忠誠資金の要求に加えて、様々な不便があっても朝僑が「朝鮮籍」を維持するのには理由がある。 韓国の朝鮮日報によると、中国当局は、国籍の取得手続きに本来必要な「国籍放棄確認書」がなくても中国国籍を与えていた。

例えば、1950年にハルビンで生まれた金さんは、1958年に家族と主に北朝鮮に戻って朝鮮籍を取得したが、1965年に再度中国に戻って漢族の男性と結婚。それ以来、江蘇省の鎮江で暮らしてきたが、2010年8月に中国国籍の取得に成功した。

金さんのように朝鮮籍を放棄して中国国籍を取得しようとする人が増えたためか、中国当局は「国籍放棄確認書」を要求するようになった。しかし、北朝鮮大使館はこの確認書を発行を渋るため手続きが困難になっているのだ。

中国内陸部在住の朝僑はデイリーNK取材班に次のように語った。

「北朝鮮に経済的余裕があった頃は、領事館で様々な便宜を図ってくれた。中国の福祉制度を適用されなくても問題なかった。しかし、経済的に苦しくなった90年代以降は、そういった便宜もなくなった。むしろこっち(朝僑)が領事館に『便宜を図る』有様だ」

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