北朝鮮当局が、10月10日に開かれた朝鮮労働党創建70周年記念の閲兵式(軍事パレード)など各種イベントに20億ドル(約2375億円)ものの巨額の資金が投入されたと宣伝しているという。「無駄使い」と厳しい批判にさらされた東京の新国立競技場の建設費(2651億円)に近い巨額の予算が使われていたことになる。

労働党創建70周年記念閲兵式(2015年10月11日付労働新聞より)
10月10日に開催された労働党創建70周年記念の軍事パレード(画像:労働新聞)

デイリーNKの平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋によると、一般住民を対象にした講演会で、北朝鮮当局は軍事パレードを自画自賛しているという。

「講演会では、『パレードは中国やロシアと比べても遜色ない規模だった。行事には20億ドルに費用がかかった』と説明されたが、この額が住民たちの怒りに火をつけてしまった」(内部情報筋)

住民たちが怒るのも無理はない。軍事パレードや記念行事のために動員され、「忠誠」の名目で金品を略奪され、肉体的にも精神的にも疲弊しきっているからだ。

韓国の聯合ニュースによると、8月には「建設費や軍事パレードの予算に使う」として1戸あたり40人民元が徴収されたという。さらに「祝賀行事の邪魔になる」として市場の営業時間を短縮させたり、工場の仕事を休ませて行事の準備やリハーサルに動員するなど、数々の記念行事は北朝鮮社会に莫大な経済的損失を与えたと言える。

金一族の銅像、住宅、学校、道路の建設、花畑の造成に投入された予算だけでもかなりの額だ。

軍人や学生たちは、数カ月にわたって軍事パレードのリハーサルに動員され精根尽き果てている。その後遺症なのか、髄膜炎や関節炎などにかかる住民も多い。病気になっても補償はなく、せいぜい1~2ヶ月の休暇が与えられるのみだ。

莫大な量の燃料も使われた。各軍部隊が確保していたガソリンに加え、平壌市の龍城(リョンソン)区域の戦争予備物資倉庫に保管されていた非常用の燃料まで、ほぼ使い果たしてしまった。

住民たちは今回の軍事パレードを1980年代初めに建設された「西海閘門」の建設費を例に挙げながら、軍事パレードと記念行事が「無駄遣い」だったかを語る。6年をかけて建設された西海閘門の総建設費は5億ドル(約594億円)で、今回の予算の4分の1に過ぎない。

内部情報筋によると「20億ドルあれば北朝鮮全人口の20年分の食糧が買えた」と不満を表す住民も多いという。

韓国のIBK経済研究所は、今回の軍事パレードやその関連事業に1兆から2兆ウォン(約1052億円~2104億円)が投入されたと試算している。この数字は、北朝鮮の国家予算の3分の1に達し、北朝鮮全人口の29ヶ月分のトウモロコシが購入できる額だ。

北朝鮮は、1989年の「第13回世界青年学生祭典」の開催に際して、当時の政府予算の7年分に相当する40億ドルを使った。これが90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の一因となった。

今回の20億ドルは、それに比べると少ないとはいえ、北朝鮮経済に悪影響を及ぼす可能性もある。

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