「秋夕(チュソク:日本の旧盆に当たる)」は、朝鮮民族最大の明節のといわれる。脱北者のソル・ソンア記者が北朝鮮の秋夕と松餅(ソンピョン)にまつわる思いを綴った。

私が、北朝鮮にいた10代の頃は本当に貧しい生活だった。一度でいいから「お腹一杯ごはんを食べたい」というのが切実な願いだった。雨に濡れてぬかるんだ道を見ては、「これが泥じゃなくて米粉をこねた生地だったら食べられるのになぁ」と思うほどだった。

当時の北朝鮮では、秋夕の祭壇にお供えする松餅(ソンピョン)は各家庭で作っていた。しかし、私の家には、そのような習慣がなかった。黄海道(ファンヘド)にある母方の一族の墓に行こうにも、旅行許可証が取れなかったからだ。墓参りにも行けないのに、松餅を作ってもしょうがない。それでも、私は子供心に思ったものだ。