「ワシントンを火の海に!」などと反米姿勢を貫く北朝鮮だが、住民の「米ドル」に対する執着心と愛着は、別格だ。例えば、100ドル札に描かれているベンジャミン・フランクリンは「米国じいさん」と呼ばれ、商人や幹部たちは「じいさん(100米ドル)はサイコー!」と言って憚らないという。100ドルは、市場の実質レートで故金日成主席が描かれた5,000ウォン札の160倍だが、「米国じいさんは、うちのじいさん(金日成)の160倍の価値がある」というジョークまで存在する。
また、学生たちは、ラッキーアイテムとして1ドル札を制服のポケットにこっそりとしのばせる。1ドル札の次に人気があるのは、リンカーンの肖像画が描かれている5ドル札。「リンカーンは両親を失ってまともな教育すら受けられなかったが、奴隷解放を成し遂げた」という伝説の人物として学生たちも憧れる。
こうした若者たちは、「反米映画を見させられ、反米博物館で米軍の虐殺記録を見させられ、その感想文を書かされて、全てが終われば米ドルを握りしめてデートに行く」と揶揄される。