北朝鮮では、深刻な紙不足に陥っている。パルプと電力の不足により、製紙工場がまともに稼働できない状態が続いているからだ。そこで生活に欠かせないのが古新聞。北朝鮮の新聞の紙質は悪いが、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」だけが、紙質が良く「古新聞として使える」と脚光を浴びているという。

20150821労働新聞1面
2015年8月21日の労働新聞1面。このようなページを古新聞として使うと政治犯扱いされかねない。

労働新聞の古新聞が値上がり

平安南道(ピョンアンナムド)在住のデイリーNK内部情報筋は、最近の「古新聞事情」について次のように伝えてきた。

「どの市場に行っても労働新聞が古新聞として売られており、1枚5北朝鮮ウォン(約0.75円)が、10北朝鮮ウォン(約1.5円)に値上がりするほど値段は上昇傾向だ」値段が上昇する理由は、家の改修のためだ。この時期、秋の農閑期を迎え、家の修理をする住民が増えるが、なかなか良質な壁紙が手に入らない。そこで、質のいい労働新聞が壁紙として使われるのだ。

さらに、スモーカーたちにとっても労働新聞は欠かせない。細く切った労働新聞でタバコを巻いて吸うと味が良くなるからだという。味はキツいが雑味のないタバコの葉を購入して、労働新聞で巻いて吸うのが北朝鮮の手巻きタバコ・スタイル。これは、庶民も幹部も同じだ。

北朝鮮当局にとっては、プロパガンダ、宣伝扇動用として不可欠な労働新聞だが、いまや庶民にとっては生活必需品。しかし、なぜか「誰も買わない紙面」がある。

労働新聞、とりわけ1面や2面には、頻繁に金正恩第1書記をはじめ、故金日成氏、正日氏の肖像画や写真が掲載される。金一族の写真は「1号写真」と称され、北朝鮮では最も神聖なるものだ。

例え新聞といえども、傷をつけたりすることは許されない。2011年に金正日氏が死去した時、労働新聞の1面に金正日氏の遺影が掲載されたが、顔を折らないように奇妙なたたみ方をせざるをえなかった。1号写真が掲載された紙面は1ウォンで売られていても誰も買おうとしない。

こうした事情もあって、今では、肖像画の部分だけ切り取って紙面は販売され使用されている。

何かと取り扱い面倒な労働新聞

労働新聞の発行部数は1980年代には300万部に達していたが、90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」に部数が激減した。その後も減少の一途をたどり、今では30万部程度と言われている。すでに、党細胞の書記クラス以上の労働党イルクン(党員)、工場や企業所の支配人にぐらいにしか配給されなくなっている。

それにもかかわらず、労働新聞の取り扱いに対するチェックは相変わらず行われている。労働新聞配給担当者は、肖像画が古新聞にされていたり、傷ついていないかを厳しくチェックする。幹部のなかには、「うるさい!古新聞ごときでクビが飛ぶわけないだろ!」と文句を言いながら「もう労働新聞など配達するな」と購読を断るケースもある。

そもそも、労働新聞はプロパガンダ一色で、つまらないことこの上ない。平壌新聞などの各地方紙や体育新聞などは、まだ読む記事があるが、労働新聞には「上質の古新聞」としての価値しかないのだ。

金正恩氏は「労働新聞の部数を120万部に増やせ!」との指示を出した。仮に120万部が実現すれば、古新聞の供給量が増え、庶民はさぞかし喜ぶことだろう。

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