この8月、朝鮮半島は戦争の瀬戸際にあった。意図せざるエスカレーションにより、戦争に突入してしまう危険性が高まっていたところ、金正恩氏が韓国との「チキンレース」に敗れてくれたのは幸いだった。
現に、自国軍の兵士の身体が地雷で吹き飛ばされる映像を見せられた韓国国民の間には、「北と戦うなら、戦場へ行く」との空気が醸成されていた。
しかし、いくら北朝鮮の国力が疲弊しているとはいえ、核武装した国との戦争に想像を絶するリスクがあることを忘れるべきではない。
米国など主要各国も、北朝鮮に対して戦略的な「シカト」を決め込むのならよいのだが、くれぐれも「思考停止」に陥らぬよう願うばかりだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。