北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市で大規模な公開裁判が行われたとデイリーNKの現地情報筋が伝えてきた。

公開裁判が行われたのは清津市内の浦港(ポハン)競技場。8月22日、数千人の市民が見守る中、55人の被告が連行されて来た。被告のほとんどが30~40代の男女で、その容疑は「貴金属の密輸」。金鉱の労働者や周辺の住民の持っていた金(ゴールド)を安く買い叩き、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)で国境を往来する密輸業者や中国の貿易業者に売り払い、暴利を貪っていたという。

ところが、その量は一人あたりにすると1グラムにも満たず、暴利を貪るにはあまりにも少量だ。しかし、「『忠誠の資金』の調達と国家経済発展に重大な害を与えた」との罪状で公開裁判にかけられることになった。

競技場の公開裁判は、清津市内の中高大学生や、工場、企業所の労働者、市場商人など数千人が強制的に動員されるなか行われた。こうした公開裁判にかけられると、刑事法が適用され、何年かの懲役刑や労働教化刑(強制労働)が言い渡されるのが一般的だが、当日は観客が大量に動員されていたこともあり「集団で銃殺されるのでは?」とのうわさ話も飛び交った。

ところが、蓋を開けてみれば「金正恩元帥様の愛と配慮で無罪」という判決が下され、一件落着。つまり、この裁判は形式だけのもので、「慈悲深き指導者」を宣伝するために開かれたのだった。あまりもの出来レースっぷりに、判決を聞いた人々は「まるで政治講演会に参加させられたみたい」と唖然としたという。

この判決について情報筋は次のように語った。

「大規模恩赦の実施もそうだが、党創建70周年を前にして、大量の受刑者がいるのは政治的に負担が大きいからだろう。また、『金や松茸などの外貨稼ぎ用の品には手を出すな』という当局からの警告であり脅迫という意味もあると思われる」(清津の内部情報筋)

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