南北の軍事的緊張が高まった先月、北朝鮮の金正恩第1書記は「準戦時状態」を宣布。国営メディアを通じて「全面戦争も辞さない」と強気な姿勢を明らかにした。ところが、最前線の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の部隊には「衝突が起こらないように注意せよ」と正反対の指示を下していたと軍事境界線に近い江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

情報筋によると、最前線地域は、軍人の家族や民間人が避難するなど戦々恐々とした雰囲気だったが、総参謀部から「敵(韓国軍)の挑発に絶対に乗るな!」という指示が下されたという。

総参謀部の指示は、もちろん最高司令官の金正恩氏の指示に基づく。普段は「敵がわが領土の草一本にでも手を出したら、韓国に火の洗礼を食らわせる」など、勇ましいことばかりを言いながら、「挑発に乗るな」という総参謀部の指示に朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士たちは首を傾げていたと情報筋は語った。

指示は「部隊の指揮官は兵士たちの間で感情的な対応、誤射などで軍事衝突が起こらないように、部隊員の管理に特に注意すること」と強調していた。さらに、総参謀部から派遣された高級軍官(将校)が指示の履行状況を確認するなど、念には念を入れた対応を行っていた。

別の情報筋は、「黄海南道(ファンヘナムド)の海州(ヘジュ)に駐屯する海軍8戦隊にも、『挑発に乗るな!注意せよ』という指示が出されていたと語った。大抵の軍官は『上は大騒ぎしているけど、どうせ今回も戦争は起こらない』と高をくくっていた」と語る。

北朝鮮当局のこうした指示に対して、現場では次のように囁かれているという。

「全面戦争も辞さないと騒ぎ立てているが、元帥様(金正恩氏)は、もし米軍の最新鋭武器の攻撃を食らえば、最前線の部隊はひとたまりもないことをよく知っている。つまり弱腰なんだ」

普段は、韓国側にちょっかいをかけて騒ぎ立てているが、いざ韓国が強硬に対応する兆しを見せれば「挑発に乗るな」という指示を出す金正恩氏の方針に、軍官たちは困惑を通り越して、バカにしているという。

「一般兵士や軍関係者の家族は弱腰とも言える姿勢に不安を感じていたが、むしろ軍官たちは「喧嘩も始まっていないのにビビリやがって」と吐き捨てるように言う。また、これまでの挑発事件のほとんどが、北朝鮮側から仕掛けたことは、大方の軍人は知っている」(情報筋)

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