デイリーNKジャパンは3日、統合幕僚監部(統幕)が作成して共産党に流出し、共産党の仁比聡平(にひそうへい)氏が2日の参院特別委員会で提示した資料の全文を入手した。

資料は、河野(かわの)克俊統幕長が昨年12月17、18両日の訪米で、デンプシー統合参謀本部議長ら米軍・国防総省幹部7人と会談した内容を記載したもの。当時は法案の作成に向けた自民、公明両党の与党協議が始まっていない段階だった。

資料は全23ページで、オディエルノ陸軍参謀総長、スペンサー空軍副参謀総長、ワーク国防副長官、グリナート海軍作戦部長、スイフト海軍作戦部幕僚部長、デンプシー統合参謀本部議長、ダンフォード海兵隊司令官と河野氏とのやり取りを、日付順でまとめている。

そのうち、河野氏とオディエルノ氏、ダンフォード氏、ワーク氏、スウィフト氏とのやりとりについて、以下に全文を掲載する。

取扱厳重注意

別紙第1

オディエルノ陸軍参謀総長との会談結果概要

1           日時及び場所

平成26年12月17日(水)1630-1700 米国防総省

2           会談概要

河野統幕長 本日は時間をとっていただいて感謝する。海幕長を務めていたことから、これまでは海軍との交流が多かった。今回は陸軍とも関係を持つことができ喜ばしく思っている。

 米陸軍協会年次総会に岩田陸幕長が参加し、よい議論ができたと報告を受けた。今回は情勢認識等について議論できればと思う。

 14日に衆院選挙があり、与党が圧勝した。集団的自衛権や安保法制の議論は引き続き進捗するものと認識している。年内に改訂予定であったガイドラインは来年、安保法制の整備に合わせ発表することとなった。集団的自衛権の行使が可能になった場合は米軍と自衛隊との協力関係はより深化するものと考える。

オディエルノ陸軍参謀長 現在、ガイドラインや安保法制について取り組んでいると思うが予定通りに進んでいるか?何か問題はあるか?

河野統幕長 与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている。

 今回はデンプシー議長と日米同盟の深化等について議論するため訪米した。

 先日、日米共同方面隊指揮所演習を視察する機会を得、後方支援等の分野において内容が充実しており満足している。海軍種同士はこれまで連携があったが、陸軍同士も協力関係が強化されている。

 演習後、ブルックス太平洋陸軍司令官とのセミナーは充実したものであった。

オディエルノ陸軍参謀長 本日はお時間を取っていただき感謝する。岩田陸幕長とはよい関係を築いており、数ヶ月前に訪日した際は、陸上自衛隊の目標について説明を受けた。陸上自衛隊と米陸軍がともに強化できる分野と陸上自衛隊の能力強化をすべき分野について議論した。また離島奪回に際し、いかに戦力を投入するかといったエア・アサルトについても議論することができた。この分野が陸上自衛隊と米陸軍がともに能力を構築できる分野であると考えている。

 今回の演習のポイントはストライカー部隊をいかに投入するかというものであり、戦力をいかに展開させるかといった観点から重要な分野と考えている。戦力展開に係る日米協力の強さが関係国に対する良いメッセージとなる。

 数ヶ月前、カリフォルニアにあるナショナル・トレーニング・センターにおいて小規模ながら陸上自衛隊と米陸軍が訓練を実施した。これは、相互運用性、情報共有、指揮統制機能の強化の観点から重要であると認識している。

 数年来の努力により海軍種間では相互運用性について向上が見られるが、陸軍種間では複雑な問題となっており、今まさに相互運用性の向上について取り組んでいるところである。この分野は我々が今後取り組むべき分野であると考えている。

河野統幕長 日米の取り組みだけでなく日米豪の連携強化についても取り組んでいるところである。米豪共同訓練(タリスマンセイバー)に自衛隊を派遣し、サザンジャッカルーにおいても派遣部隊の拡充をしたいと考えている。

 陸上自衛隊においては陸上総隊の設立や水陸両用部隊の設立等大きな改変の時期を迎えている。横須賀における米海軍、海上自衛隊の関係、横田における航空自衛隊と米空軍の関係がよい具体例であると認識しており、陸軍種間では座間が適当であると考えている。

オディエルノ陸軍参謀長 私も座間における連携が重要と考えており、ご支援いただいて感謝する。

 3カ国間での連携で言えば日米韓での連携も重要であると考えており、これに対する支援にも感謝する。日米韓陸軍同士での連携について、来春にミーティングを持つべく現在検討中である。

河野統幕長 北朝鮮の脅威については現在も存在しており、この観点から日米韓での連携が重要だと認識している。しかしながら日韓での防衛交流は滞っているので、米国を中心とした3カ国での協力について推進していきたいと考えている。

 北朝鮮の脅威という観点から申し上げると、経ヶ岬にTPY2レーダーが設置され本年末に運用を開始すると認識している。このレーダーの設置、運用について全面的に協力したいと考えている。

オディエルノ陸軍参謀長 日米2国間の話に戻ると、これまで陸軍種間では連携強化に取り組んでおり、これからも更なる強化に努めてまいりたい。このような取り組みが北朝鮮をはじめとする周辺国に対して良いメッセージとなると認識している。

 防衛交流や演習等あらゆることに取り組み、連携を強化することで北朝鮮、中国に対する良いメッセージとしていきたい。

河野統幕長 日中関係について申し上げたい。11月に開催されたAPECにおいて日中首脳会談が実現したことは日中関係の改善の第一歩と認識している。この首脳会談の中で日中海上連絡メカニズムの協議再開について確認された。しかしながら、日本側のアプローチに対して中国からは反応がない状況である。

 現在、東シナ海においては常時2~3隻の船舶が尖閣諸島周辺で活動しており、最近は40NM以内での活動も活発となってきた。我々はこのような中国の活動に対しては冷静に対応しているところではあるが、中国中央政府の統制が効いているのかと疑問に思う。
 これら活動において不測事態を避けるため多国間でCUESを活用し現場でのコミュニケーションを図っている。日米での連携は中国に対して有効な抑止力になっていると認識している。

オディエルノ陸軍参謀長 中国の活動に関して注視して頂き感謝する。中国に対しては外交、軍事等あらゆる手段を用い対応することが重要である。現在取り組んでいるガイドラインや安保法制作業についても有効な手段であると認識しており、引き続き見守っていきたいと考えいる。

河野統幕長 安倍政権の以前は防衛関係費は減少傾向にあったが、現在は増加傾向にあり、陸上自衛隊においてはV-22オスプレイ、AAV7を導入する。

オディエルノ陸軍参謀長 オスプレイ導入は輸送能力向上の観点から重要であり、陸軍としてはオスプレイ等を使用した離島防衛等の防御要領について支援して参りたい。

河野統幕長 貴官の協力に感謝する。

 エボラ対応のため連絡官をAFRICOMに派遣し、個人防護具をガーナに空輸した。引き続き、連絡官を通じ情報を収集させ、我々ができることを考えていきたい。

オディエルノ陸軍参謀長 現在2500名強の部隊を派遣している。共有できる訓練としては兵站と訓練が必ず必要となり、これらを充実させることが必要である。

河野統幕長 現在、エボラ対応として連絡官を派遣しているが、今後も常駐させたいと考えている。

オディエルノ陸軍参謀長 AFRICOMにおいては様々な活動を行っており人道支援のみならずテロ対策も重要となっている。過去数年間アフリカ方面で取り組みを実施し、94の活動を行ってきた。訓練やアドバイザー、能力構築支援が主であり、この分野において連絡官を通じ日本の支援を得られることは米側にとっても有益。日本の様々な形でのコミットメントに感謝。

河野統幕長 本日は時間をとっていただき感謝

オディエルノ陸軍参謀長 こちらこそ有益な意見交換に感謝

(了)

【全文入手…流出した統幕文書】
(その2)ダンフォード海兵隊司令官との会談
(その3)ワーク国防副長官との会談
(その4)スイフト海軍作戦部幕僚部長との会談

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