北朝鮮で、夏の暑い盛りに精を付けるには鶏肉や犬肉を食べるのが一般的だが、新しい肉料理が人気を呼んでいるという。北朝鮮の最新「肉料理事情」について両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

中国延辺風「羊肉の串焼き」(参考写真)
中国延辺風「羊肉の串焼き」(参考写真)

「今年の夏ぐらいから、市場の商売で小金を儲けた人々の間で羊肉が人気を集めている」(両江道の情報筋)

情報筋によると、恵山(ヘサン)の市場で羊肉は1キロ37800北朝鮮ウォン(約560円)と、1キロ17500ウォン(約260円)の犬肉に比べればかなり値が張る。それでも「羊肉は体にいい」と評判を呼び、買い求める人が増えている。羊肉に比べて犬肉が安いのは、ほとんどの家庭で家畜として犬を飼っており、供給が多いからだ。

東京の新大久保でも時折見られる「羊肉の串焼き」は、北朝鮮北部と豆満江を挟んで隣接する中国・延辺朝鮮族自治州の名物料理だ。元々は新疆ウイグル自治区出身のウイグル人が中国各地の駅前や市場で串焼きにして売っていたものだが、これが延辺にも流入し、朝鮮族好みの唐辛子味を増した味付けに変化させて発展したとみられる。

韓国でも、数年前から出稼ぎの朝鮮族が多く住む地域から流行しはじめ、今やすっかり定着した。

人気の秘訣は、延辺風の味付けで羊肉独特の臭みを抑えたことにある。北朝鮮でも「羊肉は臭い」と敬遠されていたが、延辺から持ち込んだ「羊肉串焼き用のタレ」で下ごしらえをして焼いたところ、「臭くなくて美味しい」と評判だ。

一方、トンジュ(金主、新興富裕層)は羊肉に飽きたらず、北朝鮮ではご禁制の品である「牛肉」を食べている。それも金正恩第1書記御用達の超高級品だ。

平安南道(ピョンアンナムド)にあるチュソク牧場は金正恩氏一家や特権階級に供給する牛、豚、鴨を育てているが、経営難に陥ったため、トンジュ(金主、新興富裕層)にも販売をはじめた。

7月18日牛工場を現地指導する金正恩氏/2015年5月11日付労働新聞より
7月18日牛工場を現地指導する金正恩氏/2015年5月11日付労働新聞より

牧場の幹部はトンジュ相手に牛を「一頭売り」する。小さなものなら500ドル(約6万1000円)、大きなものなら700ドル(約8万5000円)と庶民には手が出せない高級品だ。

北朝鮮では、牛は農耕用として使われる国家財産で、屠殺すると処刑されかねないので、密かに売られていた。庶民が口にする牛肉といえば、市場で売られている「病死牛肉」が関の山だった。

ところが、最近では半ば公然と売られるようになった。これには個人が飼育した牛の売買は認める方針が背景にある。

「以前は保安署(警察署)や牧場の幹部にワイロを掴ませる必要があったが、最近では現金さえ払えば、牧場から保安署のハンコが押された許可証がもらえるようになった」(内部情報筋)

この牧場の牛や豚は、金正恩氏の口に入るものだけあって、オーガニックなエサを与えて大事に育てられている。味の方も一級品で「柔らかくて甘みを感じるほどだ」と情報筋は付け加えた。

    関連記事